【特集2】主力化を支える「良い再エネ」 多様な発想と技術で「共生」へ

2022年1月3日

「悪い再エネ」を減らそうとさまざまな業界が新しい取り組みを始めている。 電力系統にも地域住民にも優しい「再エネ主力電源化」への展望とは。

旧一般電気事業者が手掛けた太陽光発電施設

「RPS法が残っていれば、地元住民をないがしろにした再エネ乱開発問題など起きなかったはずだ」。大小さまざまな電源開発に携わった旧一般電気事業者の関係者は、昨今の問題に対してこう話す。

関係者が指摘するRPS法とは旧一般電気事業者に対し、販売電力量に応じて一定の再エネ電力導入を義務付けるもの。2003年に制度が施行されて以降、旧電力各社はその導入量を増やしてきたが、いまは固定価格買い取り制度(FIT)との関係で、段階的廃止へと進んでいる。同時にRPS時代には存在しなかった再エネ問題が各地で発生している。

「電源開発に伴う地元住民への説明責任を果たさない」「自然環境を無視した乱開発」「安直な設計・施工が二次災害を招く」など、事業者の暴走を招いている。いずれのツケも、国民に跳ね返る。

70年近く大型発電設備を手掛けてきた旧一般電気事業者ならば、責任ある立場として、「良い再エネ」を開発するはずだが、現状を見るとFITの下で有象無象の事業者が参入し、「乱開発や違法行為など、やりたい放題の惨状」(環境NPO関係者)と化しているのが実状だ。

自己託送や自家消費 国民負担の低減目指す

FIT時代の「悪い再エネ」を改めようと、さまざまな視点から業界が動き出している。まずは「コスト負担の低減」だ。東京ガスエンジニアリングソリューションズやFD、テス・エンジニアリング、伊藤忠エネクスなどはPPAや自家消費、あるいは自己託送といったビジネスモデルで再エネ、とりわけ太陽光発電の導入量を増やしている。

自家消費型は、あくまでもユーザー消費分を再エネで賄うもの。料金を負担するのはユーザーであり、電力系統はおろか一般国民への負担にもならない再エネ利用の理想形と言っていい。

そこに、エネルギーサービスという視点が加わると、設備側の負担は事業者が担い、ユーザーはサービス料を支払う仕組みに変わる。エネルギーサービス事業の特性から、10年以上にわたる長期スキームが一般的だ。事業者は長期安定的な設備運用を求められるため、発電設備の安易な設計施工をすることはない。ユーザーも長期にわたって再エネを活用できる。これも理想的な事業モデルだろう。

特定の再エネ(自社電源)と特定の需要家を結ぶのが「自己託送」だ。再エネの出力変動分をサービス事業者やユーザー自らがしわ取りする。供給量と需要量を常にバランスさせるための制御技術が求められるが、電力網という公共財に対して一切の迷惑をかけない。

再エネ変動分に対する需給調整にガスコージェネを使うといった発想も生まれている。需給調整を担うのは、大型火力発電だけではない。いつでも短時間に発電量を調整できるのがコージェネの特徴でもある。マイクログリッドやスマートシティの中に組み込まれた再エネとコージェネが共存できれば、BCPを担いながら再エネ利用の拡大を支える方策にもなる。

いずれにせよ、主力電源を目指すのであれば、「良い再エネ」が理想だ。そんな理想を目指し、各社は知恵を絞り、技術を磨きながら取り組みを始めている。

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