ITでグループの基幹業務を支える データセンターを中心に外販にも注力

2022年1月8日

【ほくでん情報テクノロジー/魚住 元 取締役社長】

北海道電力グループのほくでん情報テクノロジーは、電力関連のITソリューション構築を担う。

現在は、電力以外の商材開発にも積極的に取り組むなど新たな一歩を踏み出している。

うおずみ・げん 1983年北海道大学大学院卒、北海道電力入社。2009年原子力部原子燃料統括室長、12年広報部長、16年泊原子力事務所長を経て、20年6月から現職。

 ――北海道電力グループのIT企業として、電力システム改革に関連するシステム開発は大きな仕事だったと思います。どのようなことに取り組みましたか。

魚住 2016年4月に開始となった電力小売り全面自由化が大きな山場でした。託送システムの開発、スマートメーターシステムとの連携、自由化料金メニューへの対応など大規模開発が続きました。昨年度は法的分離にも対応し、一区切りをつけることができました。

 今後も需給調整市場や発電側託送課金など制度へのシステム対応や、配電・火力などの大規模業務システムの再構築、ホスト(メインフレーム)の廃止に向けた対応が続く見込みです。

営業システムの改修など 大規模なプロジェクト続く

――現在、電力関連で取り組む代表的な仕事を教えてください。

魚住 ホストコンピューターのクライアントサーバーへの移行を進めています。特に大規模改修となるのが、北電が扱う営業システムのサーバー移行です。電気料金の受付、検針、計算、請求・収納を行うもので、主に規制料金メニューを契約する低圧のお客さまを扱っています。データ量が膨大で大きなプロジェクトになります。

――北電グループにおけるDXの位置づけは。また、具体的にどのようなことに取り組んでいますか。

魚住 DXの推進をグループの経営基盤強化の柱の一つに位置づけています。現在、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を活用した現場作業支援や発電所内での通信ネットワーク構築実証試験などの取り組みを進めており、HMDのPoC(概念実証)には当社も加わっています。今後も継続してグループ内のDXに主体的に携わっていくため、AIやIoTなどの技術力を積み上げているところです。組織面では、20年度に社外へのソリューションサービス提供、DX推進専任の「デジタルソリューション部」をつくり体制強化を図っています。

――電力関連でお客さまに提供するサービスではどのようなものを手掛けていますか。

魚住 北電ネットワークが手掛けたスマホアプリ「LINE」で停電情報を通知するサービスを開発しました。18年の北海道胆振東部地震の大停電以降、停電情報はお客さまからも関心が高い情報です。

――情報セキュリティーへの要求は日増しに高まっています。どのような対応をしていますか。

魚住 電気事業は社会の重要インフラとして、情報セキュリティーの確保が至上命題です。高度化、巧妙化するサイバー攻撃に対し、北電ではセキュリティー事故対応体制「CSIRT」や監視体制「SOC」を設置し、対応の強化を図っています。SOCに関しては、当社が北電から委託を受けて、全面的にその役割を担っています。今後、ワークスタイルの変革、DXの推進など、クラウドの利用が拡大していくことから、さらなる充実と強化が求められます。

――北電グループ外への販売事業について聞かせてください。

魚住 当社はデータセンター事業を01年に開始しました。現在、約180社のお客さまにご利用いただいており、外販の柱になっています。まずは、同事業の営業活動の強化と充実を図るとともに、サービスを充実させ顧客の幅を広げていきたいと考えています。

 このほか、RPAや企業用メッセンジャー、情報セキュリティーサービスなどを提供しています。また、近年のワークスタイルの変革は、ビジネスチャンスでもあります。20年度には、リモートデスクトップ方式のテレワークソリューション「スプラッシュトップビジネス」やウェブ会議導入支援サービスの提供を開始しました。さまざまなサービスを提供していますが、まだ収益は少なく主要事業には育っていません。当面の柱はデータセンター事業です。将来的には、新サービスとのシナジー効果によって、データセンター事業の顧客拡大につなげていければと思っています。

外販事業の中核となるH-IXデータセンター

成長に向けた二つの目標 グループ貢献と事業拡大

――今後、北電グループにおける貴社のミッションや果たすべき役割はどのようにお考えですか。

魚住 まずは、北電および北電ネットワークの基幹業務システムと情報インフラを一貫して支えていくことです。当社売上高の8割以上は北電と北電ネットワークからの収入で賄われています。本社のシステム開発に注力していくとともに、DXの実現に向けて必要なサービスを提供していきます。

 今後数年は北電グループからの仕事によって一定水準の収入が期待できますが、近い将来には縮小に向かうものと想定しています。

当社は20年6月で創立30年周年を迎えました。今後も持続的な成長を果たしていくためには、グループ以外の事業領域をさらに拡大していかなければなりません。データセンター事業を中核に一般市場での収益拡大を目指します。技術動向を的確にキャッチアップし、機会を逸することなく挑戦していきたいと思っています。これらを果たすことで、北海道の電力安定供給と北電グループの発展に貢献していきます。