【コラム/1月25日】原子力に光は見えてきたか?

2022年1月25日

福島 伸享/衆議院議員

2022年は、EUの欧州委員会が原子力を持続可能な環境に資する投資として認定する方向である、というニュースで幕を開けた。1/3の日経新聞には「日本、米高速炉計画に参加」との見出しが躍り、ビル・ゲイツ氏が出資するテラパワー社や米国エネルギー省が推進する高速炉開発計画に日本原子力研究開発機構や三菱重工が協力する、との報道が流れた。1/17に開会した通常国会の施政方針演説でも、岸田首相はこれからとりまとめる「クリーンエネルギー戦略」の中の一分野として、「革新原子力」を例示している。

今年は、3.11後の原子力冬の時代の雪融けの年となるようにも思える。実際、1/11に私の地元で行われた「茨城原子力協議会新春のつどい」では、同協議会の内山会長や日本原子力研究開発機構の児玉理事長からは、期待の思いが溢れていた。

しかし、実際はどうか?足元をもう一度見直してみなければならない。「新春の集い」では、東海第二原発の再稼働問題を抱える大井川茨城県知事は、「今日はマスコミが多く来ているので発言に注意しなければ」と当たり障りのない官僚原稿を読んでサッと帰る素っ気ない対応に終始した。地元東海村の山田村長は「原子力発祥の地としての矜持を持って」と、国の曖昧な政策の間で翻弄される首長としての悲壮感を持った挨拶をされた。多くの国民が原子力に忌避感を持つ3.11後の原子力冬の時代は、原発再稼働に関しては何ら変わるところはない。

私が原発の立地を担当していた1990年代は、「トイレなきマンション」と言われながらも、高速増殖炉を開発し、六ケ所村の核燃料再処理施設を稼働させ、高レベル廃棄物の地層処分を進める準備をしている、と核燃料サイクルの説明をすることで何とか原子力に対する信用を得ようとしていた。しかし、現在ではもんじゅは廃炉となり、あれから四半世紀以上が経っても核燃料再処理施設は稼働していない。政策体系が破綻して完結しておらず、今後我が国の原子力産業がどのようになっていくのかが不透明な中で、国民の理解や信用を得るのは難しいだろう。「海外ではこうなっているから」という「出羽守(でわのかみ)」の論法も、もはや通じまい。

そうは言っても、世界は原子力の復権に向けて少しずつ動いている。だからこそ、日本が主体的に我が国の原子力産業をどうするのか、官民の役割分担を明確しながら誰が担い、どのようなファンディングをしていくのか、何をターゲットに技術開発を進めていくのか、原子力政策の体系的な再構築を図ることが、今こそ必要である。ただ原発の再稼働を進めるといった数字を掲げているだけでは、世論は変わらず、何も進まない。その際、平成までの国の研究機関が中心となった単線的な技術開発一辺倒や、地域独占企業による運営を前提とした産業論では、再び停滞と失敗の歴史を繰り返すことになるだろう。

2022年、原子力にとって一筋の光は見えてきた。原子力のルネサンスを興すためには、単に世界の時流に乗ろうとしたり、他国の政策に同調するだけではなく、その前に我が国の原子力政策自体の抜本的な再構築を始めなければならないのだ。「革新原子力」と言っている岸田首相に、果たしてその視点と覚悟はあるだろうか。

【プロフィール】東京大学農学部卒。通商産業省(現経産省)入省。調査統計、橋本内閣での行政改革、電力・ガス・原子力政策、バイオ産業政策などに携わり、小泉内閣の内閣官房で構造改革特区の実現を果たす。2021年10月の衆院選で当選(3期目)