国の審査に合格した島根2号機 稼働見据え情報公開に全力

2022年2月4日

【中国電力】

ABWRを有し長期稼働が見込める島根原子力発電所は、脱炭素化政策上特に重要な意味を持つサイトだ。

2号機に設置変更許可が下り、中国電力は地元の理解醸成に向けた活動に尽力する。

 福島第一原子力発電所の事故から10年を経て、ようやくBWR(沸騰水型炉)の稼働が見通せるようになってきた。

島根原子力発電所では2021年9月15日に新規制基準に関わる原子炉設置変更許可が下り、再稼働に向けたさまざまな取り組みが進んでいる。これからは、稼働年数ゼロ、つまり少なくとも今後40年間稼働できるABWR(改良型BWR)である3号機の審査が控えている。

このように同発電所は、中国電力はもとより原子力政策上も重要なサイトであり、その動向が注目されている。

2号機の申請から8年弱 軌道に乗る安全対策工事

2号機は設置変更許可が出るまでに8年弱かかった。ほかの原子力発電所と同様、特に地震や津波の想定に関して厳しく審査され、中でも時間を要したのが発電所の南側にある宍道断層の評価だ。申請時には約22㎞と想定していたが、より万全を期すための追加調査の結果を踏まえ、保守的に約39㎞に延長した。それに伴い基準地震動は600ガルから820ガルに見直した。

最大の津波高さについても、より厳しい想定を行い、海抜11・9mに見直した。日本海側の津波想定としては高い部類だ。防波壁は、福島第一事故直後に当時の経営者がかさ上げを判断し、申請前の13年9月には海抜15mの壁を完成させていた。現在は、防波壁の健全性確保に万全を期すための補強工事が進められている。

東日本大震災を教訓に15mにかさ上げした防波壁

また、万が一、防波壁を越波した場合などに備え、2、3号機の建屋内外には100枚以上の水密扉を設置し、重要設備の浸水を防止している。

このほか、竜巻は最大風速92m(秒速)、火山灰は、島根県中央部に位置する三瓶山噴火時の層厚を56‌cmなどと想定し直した。島根原子力本部の渡部公一広報部長は「山に囲まれ、平地が狭いという特性上、大規模設備新設のためには敷地造成を要するという苦労があります」と説明する。

電源の確保に向けた対策も進む。例えば、ガスタービン発電機(6000k‌VA×3台)を津波の影響を受けない高台に設置したほか、構内には14台の高圧発電機車を分散配備している。

また、独自対策として、外部電源用高圧鉄塔を構内の岩盤上に建設した。送電設備が被害を受けても早い段階で復旧が見込まれる6万6000V系について、復旧後直ちに外部電源を受電できるようにしている。「福島第一の事故は電源喪失が全ての発端。電源の供給手段を多様化し、同様の事態が起こらないように万全を期す」(渡部部長)との決意からだ。

理解醸成を目指して 原子力のCM放映

再稼働に向けては、近隣住民への丁寧な説明も欠かせない。特に島根原子力発電所は県庁所在地に立地する唯一のサイトであり、UPZ(発電所から半径30㎞圏内)の人口が約46万人と、全国で3番目の多さだ。故に避難計画の実効性への関心は高く、その点を留意した理解・広報活動に努めている。

島根原子力発電所では安全性向上に向けたさまざまな取り組みが進む

万が一、原子力災害が発生した場合は、国や地方自治体と連携した対応を行う。中国電力は、スクリーニング検査の対応に最大1300人を動員できる人的体制を敷いているほか、福祉車両の確保を進めている。また、毎年実施される自治体主催の訓練にも参加するなど、事業者としてできる限りの対応を行う方針だ。

これまで同社単独での説明会は7回開催。従前からの理解活動である自治会や婦人会などへの説明機会もたびたび設けている。加えて、自治体主催の大小数十回の説明会にも同社担当者が出席する。「2号機再稼働の必要性について、国や地域のエネルギー事情や脱炭素電源としての位置付けなどの観点から説明しています。安全を最優先にさまざまな対策を講じていることなどを伝え、ご理解をいただけるようしっかりと理解活動に取り組んでいきたいと考えています」(渡部部長)

昨夏には、UPZの住民が対象の公募での現地見学会を5回実施。百聞は一見にしかずで、参加者からの反応に手応えを感じている。直接訪れて見学することが難しい人向けには、発電所のバーチャルツアーをHPで公開している。

さらに、島根原子力発電所への理解促進を目的としたテレビCMを21年9月から放映中だ。コンセプトは「向き合う」。安全、地域、技術などに向き合い、発電所で働く社員にスポットを当てた。「実際に働いている人が出演することによって、安全確保に懸命な姿を感じられた」など、好意的な反応が寄せられているという。

渡部部長は「これで安全対策は十分だと思った瞬間に思考停止に陥る。安全を不断に追求し続け、皆さまに安心していただくことが重要です」と強調。さらに「今後の理解活動の中では、安全対策はもちろんのこと、訓練や日々の業務を通じて実際に働く人の力量を高める努力をしていることについても、さまざまな広報ツールを駆使しながら伝えていきたいと考えています」と続ける。再稼働に向けたハード、ソフト両面での対応に、引き続き万全を期す構えだ。

CMや特設サイトで社員の姿勢をアピール