インフラメンテナンス大賞で受賞 煙突内部のドローン点検手法を開発

2022年2月12日

【関西電力】

 関西電力はこのほど、経済産業省、国土交通省などが行うインフラメンテナンス大賞で、「経済産業大臣賞」を受賞した。インフラメンテナンス大賞は、国内のインフラメンテナンスに関わる優れた取り組みや技術開発を表彰し、理念の普及とメンテナンス産業の活性化を図ることを目的としたものだ。全247件の応募の中から関電の「自律飛行型ドローンを活用した火力発電所煙突内部点検手法の開発」が同賞に輝いた。

火力発電所の煙突点検は、ゴンドラでの目視点検方式が主流だ。高さが200mにも及ぶ煙突内では、自律飛行して撮影するドローン技術が必須。だが煙突内は非GPS環境に加え一様な景色のため、一般的な映像認識技術だけでは安定した飛行ができない。

そこで関電はドローンに、①水平制御用カメラとLiDARセンサーを搭載し、水平を制御、②気圧センサーで高度を制御、③方位制御用カメラを搭載し、煙突底部のLEDテープライトを認識させ、方位角を制御―の三つの組み合わせで安定した飛行と高精度な点検が可能な手法を開発した。

鍵は煙突底部に設置するLEDテープライトだ。これにより、ドローンは円の中央と方位を保持しながら自律飛行で上昇し、カメラ正面の範囲を撮影する。1回の上昇で約200枚を撮り、別の方位に機体を回転させ撮影を繰り返す。画像は専用の画像処理ソフトで自動合成し、展開図化したものをチェックする。ひび割れの分布状況などをソフトで定量的に評価できるため、優先すべき補修箇所も見つけやすい。ゴンドラで目視点検する0・3mm幅のひび割れもしっかり捉え、既に自社設備の実点検で適用している。

開発した手法は多方面での活用に期待できる

ドローンの活用で仮設の足場が不要となり、工期も約90%を短縮。点検コストも約50%の削減につながった。何より高所での作業がなくなり安全性が向上した。

土木建築室保全技術グループの森井祐介さんは「ゴンドラ点検はその場で補修できるというメリットがある。ドローン点検と組み合わせて活用したい」と話す。

高さ方向の形状が同一であれば内部が金属であっても対応が可能で、ボイラーや石炭サイロ内部、水力発電所への活用も見込まれる。

洋上風力の点検にも期待 発電コストの低減に貢献

関電は、洋上風力でも自律飛行するドローン点検の実証を進めている。嶋田隆一チーフマネジャーは、「被雷して風車の点検が必要な時に、波浪で船が出せないことがある。ドローンならそのような場面でも迅速に対応できる」と、有用性を強調。いち早く確認ができれば、発電機会の損失を防ぎ発電コストの低減につながる。自社の開発技術を活用し、社会的コストの削減に貢献したいとしている。