【コラム/2月10日】地域における再エネ導入による脱炭素の実現に向けて

2022年2月10日

渡邊開也/リニューアブル・ジャパン株式会社 執行役員 社長室長

2022年が始まって早1か月、オミクロンに関するニュースが毎日流れている一方、脱炭素に関するニュースも日々何らかの形で目にすると感じる。ただ、最近の脱炭素に関するニュースは、洋上風力の選定された入札価格が従来の業界の常識を覆す価格であったことや「再生エネ普及へ送電網、2兆円超の投資想定」、「交流→直流へ送電大転換、…、再エネ普及へ構築」といったように、大企業の動きや大型発電所で発電した電力を大都市に届けるという強靭化法案でいうところの競争型電源の話、洋上風力をはじめとした再エネBULK電源を大送電網を整備して3大都市へ如何に届けるか?といったニュースばかりではないか?コロナ禍でワーケーションをはじめとした人の分散化が起こり始めているのに、地域による地産地消やマイクログリッド、レジリエンスはどうなっているのか?と思うのは私だけだろうか?

先日、自治体、メーカー、地域新電力、鉄道会社、金融機関、地元企業等の方々による地域における再エネ導入による脱炭素の実現に向けてどんな課題があるのかというテーマで座談会があり、そこに出席させていただいた。2時間余りの座談会の中で、参加された方がそれぞれの立場からの見方はあるものの異口同音におっしゃっていたのは、地域における再エネ導入の現実的な課題の中でキーとなるのは、「自治体の役割が大きい反面、それを推進する人材が圧倒的に不足しているということ」に集約されるのではないかと感じたことだ。

環境省の資料によると、2021年8月31日時点で「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明」をした自治体は444自治体(40都道府県、268市、10特別区、106町、20村)である。表明自治体総人口約1億1140万人※(※表明自治体総人口(各地方公共団体の人口合計)では、都道府県と市区町村の重複を除外して計算。)で、表明市区町村の人口は6414万人である。日本の総人口が約1億2000万人であるから、人口カバー率でいうと2人に1人は2050年カーボンニュートラルを表明していることになる。これだけ見ると如何に脱炭素リテラシーが高いかと思ってしまう。しかしこの表明した市区町村に住んでいる方々がそういう意識を持ち、30年後に向けて具体的に活動しているのだろうか?前述の座談会での話ではないが、総論賛成、各論何から取り組んでいけば良いのかわからない、限られた人材や予算の中でどうして良いかわからない、能動的にというより受動的に取り組んでいる(まるで、親から宿題ちゃんとやりなさいよと言われている子供のような気持ち)、というのが本音ではないだろうか。やりたくないのではなく、わからない、だからきちんと知りたいと思っている全国の自治体担当の方は多いと思う。

そこで、ジャストアイディアべースではあるが、例えば、全国市長会議のように各自治体の脱炭素実務担当者連絡会を定期的に開催して、情報交換や意見交換をするとか、ロボットコンテストならぬ脱炭素取り組みコンテストみたいなものをやって、取り組みを競う(披露)しあう、上位自治体は国から交付金が積み増しされるとか、大学入試合格者ランキングならぬ全国脱炭素取り組み市区町村ランキングをビジネス雑誌に特集してもらってアピールする場にするといったようにもっと前向きに取り組める要素を出してはどうだろうか?取り組み事例が取り上げられれば、その自治体はモチベーションになるし、何をして良いかわからない自治体は、先進的な自治体がどこなのか知りそこに教えを乞うことができるし、また、自分たちと似たような条件の中でどう取り組んでいるのかも参考になると思う。

つまるところ、地域における脱炭素の実現とは、何か特別なことではなく、先行している自治体の事例を如何に横展開し、各自治体にノウハウを貯めて人材を育てていくかということに尽きると思う。

参考図:脱炭素取り組みランキング(イメージ)

出 典

・日本経済新聞「再生エネ普及へ送電網、2兆円超の投資想定 首相が指示」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA231B1023122021000000/

・日本経済新聞「交流→直流へ送電大転換 日立やNTT、再エネ普及へ構築」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2119E0R21C21A2000000/

・環境省「地域の脱炭素化の促進について(改正地球温暖化対策推進法等)」https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20210907/210907energy12.pdf

【プロフィール】1996年一橋大学経済学部卒、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2017年リニューアブル・ジャパン入社。2019年一般社団法人 再生可能エネルギー長期安定電源推進協会設立、同事務局長を務めた。