再エネ普及のカギ握る「メタネーション」 東ガス×横浜市が実証試験開始

2022年4月3日

東京ガスが進めるカーボンニュートラルの取り組みの一つとして、メタネーションの実証試験がある。既存のメタネーション技術は、触媒を使ったCO2と水素の反応(サバティエ反応)により、都市ガスの主成分となるメタンを生成する。CO2は燃焼排ガスなどから分離回収。水素の生成には水電解装置が使われ、実用化すればCO2の排出量が回収量と相殺され、ガス事業の脱炭素化に大きく寄与する。

今年1月、東京ガスは横浜市と鶴見区末広町にある横浜テクノステーションで行うメタネーションの実証試験に関する連携協定を締結した。同社敷地に隣接する横浜市下水道センターとごみ焼却工場から排ガス、消化ガスや再生水を受け取り、それらに含まれるCO2と、水の電気分解によって得られる水素を原料としてメタンを合成。エネルギーの地産地消を目指すとしている。

東京ガス・メタネーション推進グループの小笠原慶氏は「実証試験では、日立造船製のメタネーション装置を使い、横浜市との地産地消実証をはじめとした各種運転試験などから、プラント運用や社会実装に向けた大型化に関する課題を洗い出す。2020年代後半には革新的なメタネーション技術を追加して、より高効率な実証を行いたい」と話す。具体的にはサバティエ反応を低温化し、排熱を水電解の反応に活用する高効率なメタン生成技術「ハイブリッドサバティエ」や、電極触媒と高分子電解質膜を使い、CO2を直接メタンに転換する技術「PEMCO2還元」の実用化を目指すという。

次世代セルスタック技術  2年以内に量産化目指す

メタネーションの実用化に欠かせないのが、水電解による水素製造技術だ。昨年5月には、燃料電池の技術開発などを行うSCREENホールディングスと、水電解用セルスタックの低コスト製造技術の共同開発に合意。電解質膜に塗膜化した触媒を貼り付ける技術で、高速かつ大量製造を目指す。「わが社が持つ触媒技術とSCREENさんの燃料電池製造技術を合わせ、共同開発開始から2年以内に技術を確立していきたい」(水素製造技術開発グループの白﨑義則氏)。目指すは、将来の低コスト化に向けた次世代セルスタックの開発だ。

メタネーションの実用化や水素製造技術にはまだまだ課題も多い。製造コストや供給安定性の確保、水素とメタンを受け取る需要側の設備など、革新的な技術がどこまで実現可能か問われている。30年代にメタネーションの海外展開・商用化を実現させるため、東京ガスの研究が加速する。

東京ガスで技術開発に取り組む小笠原慶氏(左)白﨑義則氏(右)