カーボンニュートラル支援を収益化 分散型リソースで事業の発展目指す

2022年4月6日

【四国電力】

四国電力は顧客のカーボンニュートラル実現を支援し、VPP事業の拡大につなげる。

次世代電力取引のプラットフォーム構築に向けて、グループが一丸となって力を合わせていく。

 分散型エネルギーリソースであるPV(太陽光発電)や蓄電池、EVは、カーボンニュートラル(CN)への切り札として注目されている。

四国電力は2021年3月、分散型エネルギー事業を今後の成長領域と捉え、利用拡大を目的に「分散型エネルギー事業推進室(DER室)」を設置した。

篠原義人DER室長は「電力ビジネスの環境が激変する中で、系統電力による一方通行の電力供給だけでなく、分散型エネルギーリソースとデジタル技術を駆使して、CNをはじめとする顧客の多様なニーズにしっかりと応えていくことが、電力会社の新たなミッションになっている」と説明する。

自治体や法人からはCN実現のために何から取り組めばいいのかという問い合わせが増えた。より一層の提案力の強化と迅速化を図るため、今年3月、四電はDER室を新規事業部から営業推進本部下に置く組織体制とした。

CNコンサルティングを得意とするグループ会社などと連携し、よんでんグループが一体となって、現状把握や計画策定からソリューションの提供まで一元的に提案活動を実施する構えだ。

DER室の大元峰司総括・EVユニットリーダーは「営業車をEVにすることや、自社の屋根に第三者がPVを設置して自家消費するオンサイトPPAが取り掛かりやすい。まずは簡単なところからスタートさせたいという要望や、コンサルによる設備改修や運用改善の支援、非化石証書の提供まで、幅広く対応しています」と、顧客のニーズに合わせた提案を行う。

EVは甚大な被害をもたらした18年の西日本豪雨災害で、“動く蓄電池”として注目された。自治体や法人では、EV利用をBCP(事業継続計画)の一環として捉え、導入の検討が進む。四電も充電器とセットでEVをリースできるサービスや、充電にCO2フリー電気を供給するオプションなど、CNへの取り組みにつながるソリューションをラインアップする。

リソースを束ね事業を拡大 鍵を握るのは蓄電池

四電は自治体や法人に分散型エネルギーを提案する一方、これらを活用したVPP(仮想発電所)事業に取り組んでいる。

VPPでは既に産業用自家発電や工場の需要家設備によるデマンドレスポンスを用いて、容量市場と調整力公募電源`Iに参入。19~20年度には、VPPアグリゲータとしての技術・運営に関する知見の習得と、ほかのプレーヤーとの関係構築のために、国のVPP実証事業に関西電力コンソーシアムのリソースアグリゲーターとして参画した。NAS電池やリチウムイオン電池を導入している顧客3者の蓄電池合計2650kWを活用したVPP実証を行い、需給調整市場の要件に適合した制御ができることを確認した。

また、需給調整市場への参入・収益化に向けては、リソースの絶対量を増やすことを必須とし、21年度は自家発電を組み合わせたより高度な実証も行った。

篠原室長はVPP事業の主要なターゲットになるのは需給調整市場で、その鍵を握るのは蓄電池だと言う。国の方針でも30年までにPVを最大4400万kW増やす計画があることを挙げ、「PVを蓄電池と組み合わせれば、発電を無駄にすることなく使えるとともに、VPPでも制御しやすい有力なリソースになる」と強調する。

現在の蓄電池の導入は家庭用が先行しているが、脱炭素への関心の高まりや低価格化によって自治体や法人への導入が加速的に進むとみている。

「BCP対策やピークカットでの活用を切り口に、第三者所有モデルなどのスキームを使いながら蓄電池の拡大を図っていく。さらに蓄電池としてのポテンシャルを持つEVについても、VPP活用の肝となる制御技術はグループ会社と協力して見極めていく」。利用時間帯の予測が比較的容易なバスや営業車などのEVを束ね、複数拠点の遠隔充放電制御が可能なシステムの検討も進める。将来は個人のEVもVPPリソースとして活用することを見据えている。

PVを全国展開 次世代電力取引へ発展

設置が拡大しているPVについては、シンガポールのサンシープ社、住友商事とともに「サン・トリニティー合同会社」を設立し、今年3月、事業を開始した。サンシープ社は屋根置きソーラーを中心に幅広く事業を展開。シンガポールを拠点に東南アジアで圧倒的なシェアを誇る。資機材調達の面でも複数の有力メーカーと取引があり、その調達力が強みだ。

四電は住友商事と共にPV事業を全国展開し、オフサイトPPAやため池を活用した水上ソーラーなども手掛けていく。顧客のCN実現を支援しながら分散型エネルギーのリソースを増やすことで、VPP事業の規模拡大を図り、容量市場や需給調整市場での収益化につなげる。将来的にはこれらリソースを有機的に結び付け、個人間電力取引(P2P)や、環境価値の取引まで行う次世代電力取引のプラットフォーム構築を目指す。

脱炭素×分散型エネルギーのサービス開発ロードマップ