ガス業界が初のCNセミナー開催 合成メタン技術推進で目標達成へ

2022年5月6日

【カーボンニュートラルセミナー】

 日本ガス協会と東京ガス、大阪ガスの3者は3月24日、2050年カーボンニュートラル(CN)実現に向け、業界内の取り組みを発信する報道機関向けセミナーを都内で行った。初開催となる同セミナーはオンラインでも同時配信し、ガス会社関係者を中心におよそ200人が参加した。

セミナーでは「『メタネーション』の社会実装に向けた都市ガス業界の挑戦」をテーマに、メタネーションの意義や業界の取り組みなどを説明した。メタネーションとは、水素とCO2を反応(サバティエ反応)させ、都市ガス用の合成メタンを生成する技術で、実用化すればCO2の排出量が回収量と相殺され、CN実現へ前進する。

最初に登壇した日本ガス協会の竹田剛CN推進センター長は、現在のガス業界の方針について述べた。既存インフラを活用できるメタネーションの利点を踏まえて「30年に都市ガスのCN化率を5%以上にして、50年までには都市ガス全体に占める合成メタンの割合を90%まで増やしたい」との目標を掲げている。

オンライン視聴含めおよそ200人が参加した

CN達成に合成メタン活用 都市ガス業界で技術開発

続いて、地球環境産業技術研究機構の秋元圭吾氏が講演し、50年CN実現に向けたシナリオを分析。CN化後も高温熱を使う産業用でガスの需要が高まると指摘した。秋元氏は「ガス業界はクレジットでオフセットしたCNガスから、合成メタンの移行へと、スムーズなCN達成の道筋が立つ」と説明。合成メタン活用は経済的な合理性があることを示した。

東京ガスと大阪ガスは、それぞれのメタネーション技術開発について説明。既存のサバティエ反応を用いたメタネーション実証実験を進めるとした。東京ガスは、将来的に高効率化や低コスト化が期待できる「ハイブリッドサバティエ」「PEMCO2還元」「バイオリアクター」など、革新的技術の開発推進を発表。大阪ガスも「バイオメタネーション」「SOECメタネーション」など新技術を、大阪市此花区内の研究拠点「カーボンニュートラルリサーチハブ」で開発していくと述べた。

3者はセミナー終了後、同セミナーを定期的に開催する方針を示している。大阪ガスの森田哲司エネルギー技術研究所長は「CN宣言で加速した流れに乗り、チャレンジ精神を生かして技術の実現化に動く。25年の大阪万博までに披露できるようにしたい」と展望を語った。今後は東京ガス、大阪ガスともに研究施設の見学会の開催も進める方針だ。