低・脱炭素化時代のガス供給 導管事業者の視点で議論

2022年5月8日

【野田太一/経済産業省 資源エネルギー庁 ガス市場整備室長】

ガスシステム改革には、天然ガスの普及拡大と安定供給の確保、そして都市ガス料金の最大限の抑制と利用メニューの多様化、事業機会の多角化―といった狙いがあります。中でも2017年の都市ガス小売り全面自由化は、利用メニューの多様化、事業機会の拡大を大きく後押しするターニングポイントとなりました。

天然ガスを巡る環境は著しく変化していますが、都市ガス小売り市場における競争を通じて、各事業者からさまざまな料金メニューが提示され、引き続き需要家の選択肢が拡大していくことを期待しています。

東京・大阪・東邦の大手都市ガス3社のエリアは、大きな商圏を抱えていることもあり非常に需要密度が高く、新規参入者が多いエリアです。導管部門が別会社化したことは、システム改革の大きな節目となりますが、これまでも適正に業務が進められてきましたので、市場競争への影響という意味では短期的に劇的な変化をもたらさないかもしれません。ですが、長期的に見れば社員の意識や各社の事業戦略などにさまざまな変化をもたらすことが期待されます。

3月7日のガス事業制度ワーキンググループにおいて、今後のガス政策の在り方を巡る論点の一つとして、「法的分離等の環境変化を踏まえた、レジリエンスを含むガス供給ネットワーク・ガス供給事業の在り方」を提示しました。いずれかのタイミングで、低・炭素化、脱炭素社会実現に向け、水素や合成メタンなど先々を見据えたガス体エネルギーのネットワークがどうあるべきか、導管事業者の視点から議論する機会を設けたいと考えています。

導管新社3社には、ネットワークを通じた供給において、最適な在り方を考える主体となっていただき、将来の日本のガス体エネルギーのネットワークのあるべき姿をわれわれと共に考えていただきたいと思います。