【特集2】オフグリッドで再エネ100% 防災拠点として機能を強化

2022年6月3日

【九電工】

全量再エネ利用のエネルギーシステムの運用が始まった。佐賀県小城市では庁舎内の電気を全て太陽光が賄っている。

佐賀県小城市の市庁舎で、今年の冬からユニークな分散型システムの運用が始まった。九電工が手掛ける「再エネ100%利用」のシステムだ。既設庁舎に、太陽光パネル(552kW)と鉛蓄電池(3

456kW時)を設置。最大需要となる300kW程度に対して、実質100%の再エネで、エネルギーの自給自足を行う仕組みだ。電力会社からは基本的にオフグリッドで運用している。このシステムの核が「九電工EMS」だ。

建屋向けのエネルギーマネジメントシステムとなるとBEMSが想起されやすいが、九電工の独自技術で編み出したこのシステムは、それとは異なる。その仕組みについて、昨年7月に発足した新組織、グリーンエネルギー事業部の松村敏明担当部長はこう話す。

「一言で説明すると発電側のマネジメントシステムです。再エネ電力を、最も高い効率で負荷側に送電します。再エネの出力は変動するので使い勝手が悪いのですが、このシステムは、変動分を取り除いて安定した出力分のみを負荷に送ります。同時に変動分を蓄電池に充電することで、再エネ電気を一滴も無駄にしない自動制御システムです」

そんな技術開発に九電工が取り掛かったのは、同社と友好関係にあるインドネシアとの縁だ。「化石資源大国でしたが、現在では資源輸入国です。数多くの離島が存在し、多くは内燃力で発電しています。何とか再エネで課題解決したい」。そんなニーズに応えようとしたことから始まり、現在、同国で事業化に向け取り組んでいる。一方、小城市側は2018年の北海道大停電を契機に、エネルギー強靭化や再エネ利用の拡大を志向していた。そんなニーズとシーズが重なり、今回の運用に至った。

課題は余剰電力の活用 近隣施設にも供給開始

課題だった冬場の需要を順調に乗り切り、目下の課題は春や秋の空調需要の落ち込みで生じる余剰電力の活用先だ。その取り組みについて同じ部署の四宮健吾課長はこう話す。

「市役所近隣の別の公共施設である福祉施設への供給も開始しました。施設内の負荷分を増やすなど工夫しながら、再エネ発電の有効活用につなげたいです」

九電工EMSを導入した小城市庁舎

また、一連の取り組みは防災拠点としての機能も果たす。現在、市は庁舎と福祉施設を防災拠点として位置付け、有事には再エネ電気でレジリエンス性を高めようとしている。再エネ拡大と防災機能の強化―。二つの側面から九電工EMSが役割を果たす。