オフィスビル「福岡舞鶴スクエア」が完成 持続可能なコミュニティーを共創する

2022年6月8日

【九州電力】

九電グループ初の開発型SPCを活用した福岡舞鶴スクエアがオープンした。再エネ由来の電力を全館に導入し、脱炭素社会の実現に貢献する。

福岡舞鶴スクエア。コロナ禍にもかかわらずほぼ満床で稼働した。

 九州最大の繁華街、福岡市天神から地下鉄で一駅の「赤坂駅」から徒歩3分。福岡城の本丸跡がある緑豊かな舞鶴公園の近くに今年4月、「福岡舞鶴スクエア」が完成した。

黒田藩主の別邸があった広い敷地に建ち、1階は商業フロア、2階以上がオフィスフロアの9階建てオフィスビルだ。都心部では希少なワンフロア約1800㎡の広さを誇り、天井高2.9mの快適性を備える。敷地内には4階建ての自走式立体駐車場を併設。130台の収容が可能で、EV充電器も備えている。

下は1830㎡のオフィスフロア。120㎡~で分割のフロアもある

2回線受電を採用 再エネ100%の電力導入

福岡舞鶴スクエアは、九電グループでは初の開発型SPC(特別目的会社)による事業だ。投資家の出資や銀行の融資で、不動産の開発・運営を行う不動産証券化手法で事業に取り組む。SPCへの出資者には九州電力、電気ビル、九州メンテナンス、九電不動産のグループ4社に加え、(一財)民間都市開発推進機構、九州リースサービスなどが名を連ねる。

SPCを取りまとめるアセットマネジメントは、玄海キャピタルマネジメントが担い、自社ビルの運営・管理で実績のある電気ビルがプロパティマネジメントを、九州メンテナンスがビルメンテナンスを行う。

福岡舞鶴スクエアはBCP(事業継続計画)対応として、①異なる変電所から電力供給を受ける“2回線受電”で電力の信頼性を強化。本線を引く変電所からの電力供給が万一滞った際には、別の変電所から供給が可能、②非常時に72時間電力を供給できる非常用電源設備(出力225kVA)を設置。非常用エレベーター2基が対応、③制振ダンパーを採用し、地震発生時の揺れを軽減―といった特長を備える。

また、感染症対策として外気取り入れ窓を設置し、壁材やドアハンドル、トイレ機器などを抗菌仕様にした。さらに共用のエレベーター5基は、エレベーター行先予約システムを導入。ゲートにあらかじめ行先階を登録したカードをかざすと、システムがA~Eの各号機の稼働状況やほかの利用者の予約状況を踏まえ、最適な号機を選別し表示。乗車するとエレベーター内の行先ボタンを押さなくても目的のフロアに到着する。

当初、システムの導入は運用の効率化や混雑緩和が目的だった。現在は、ソーシャルディスタンスの確保や分散乗車につながり、感染症対策の役割も果たしている。

ゲートで乗るべきエレベーターを表示

ビル全館に供給する電力が再生可能エネルギー由来ということも大きな特長だ。九電の法人向け料金プラン「再エネECO極(きわみ)」を利用し、水力・地熱など100%再エネ由来の電力を導入する。CO2排出量はゼロとなり、入居するテナントは「RE100」を実現できる。隣接する駐車場に設置したEV普通充電器18台、急速充電器1台にも再エネ100%電力が導入される。

玄海キャピタルマネジメントの友田順也アソシエイトは、「九電が参画する事業なので、再エネ100%電力という付加価値をつけることができました」と話す。アセットマネジメントの立場では最大限の収益向上がミッションだが、カーボンマイナスの実現を目指し、供給側と需要側の両面から脱炭素に取り組む九電から「再エネECO極」の提案があり、環境価値の高いオフィスビルになった。

電気ビルのビル事業本部の田村直敏副長は「SPCで大型案件に参画し、グループのノウハウも培うことができました」と振り返る。

都市のにぎわいも創出 地域とともに発展していく

福岡舞鶴スクエアの建つ赤坂エリアは法務局や裁判所、法律事務所などが多い一方、住宅地も広がる。天神エリアに近いこともあり、職住近接をかなえる場所としても注目を浴びる。そのため、都市のにぎわい創出も意識して、1階には、ドラッグストアやコンビニエンスストア、内科や歯科といった複数のクリニックなど、ビルの利用者や地域の人々の利便性の高い店舗を配置している。

こうした取り組みや建物の環境性能が高く評価され、(一財)住宅・建築SDGs推進センター(現)の「CASBEE福岡(建築環境総合性能評価システム)」で、Aランクを取得している。

新たな事業やサービスによる市場の創出を通じて、電気事業以外での収益拡大を目指すことを戦略の柱とした「九州電力グループ経営ビジョン2030」。九州電力の都市開発事業本部の成田真也副長は、「都市開発事業はその一環です。地域・社会の持続的発展への貢献や、国内のエネルギー関連事業の収益拡大にもつなげたい」と意気込む。

大規模再開発「天神ビッグバン」が進む天神エリアのそばで、環境と地域に配慮したオフィスビルは、脱炭素社会と地域共生を目指すモデル事業として注目を浴びそうだ。

(左から)田村副長、成田副長、友田アソシエイト