【特集2】新エネとの融合図る分散型 独自色を打ち出す実証を開始

2022年6月3日

太陽光や水素など新たなエネルギー設備を取り込んだ分散型エネルギーが台頭してきた。地産地消やRE100をキーワードに構築し、今後拡大していくものとみられる。

分散型エネルギーの位置付けが大きく変わろうとしている。太陽光発電コストの急激な低下、デジタル技術の発展、RE100やSDGs(持続可能な開発目標)による再エネ導入を求める動き、頻発する自然災害への強靱化、地域経済の活性化といったことに対応するための仕組みとして需要サイドの関心が高まっているのだ。

これまでの分散型システムは、ガスコージェネを導入して電気や熱をつくり、地域冷暖房事業や分散型のエネルギーサービスを行うものが主流だった。しかしここ数年、太陽光などの再エネを軸に、蓄電池や燃料電池などを複合的に組み合わせることで、エネルギー安定供給を強化するシステムを実証する動きが出てきた。

大阪ガスと神戸市はエネファームと太陽光、蓄電池の三つを組み合わせ系統電力への依存を減らす「セミマイクログリッド」実証に取り組む。パナソニックは自社工場のRE100実現に向け純水素型燃料電池と太陽光を使った実証を開始した。九電工では太陽光と鉛蓄電池を使い、基本的にオフグリッドで実質再エネ100%での自給自足を行うなど、ユニークな事例が増えている。

パナソニックの実証は燃料電池を99台活用する

再エネの普及に向け 法整備や補助金が課題

こうした取り組みを進める上で課題となるのが、法律の整備や補助金の活用だ。例えば、環境省の補助金の中には、全量自家消費のみを対象としており、系統に接続しているものは対象にならないものがある。逆に系統につながっている場合は完全なオフサイトPPA(電力購入契約)のみを対象とするものもあり、申請しづらい仕組みになっている。「柔軟に対応できる補助金になれば、より再エネが普及するのではないか」と電力関係者は話す。

水素は新エネルギーのため取り組みに前例がなく、実証を進める上で官公庁との話し合いが毎回必要になるという。

パナソニックの「H2 KIBOU FIELD」の場合、水素を燃料にして発電する際の安全基準を定める法律が整備されておらず、統一ルールがない。このため消防法や電気事業法、高圧ガス保安法といった複数の法律を参照しながら、適した法律にのっとって施設を運用している。また、再エネ由来のグリーン水素と化石燃料(CO2排出)由来のグレー水素は同等の扱いだが、今後はグリーン水素を非化石価値として検討することも必要になってこよう。

分散型を取り巻く環境変化を受け、制度設計にもスピードと柔軟性が求められる。