【特集2】燃料電池と太陽光発電を活用 自社工場でRE100実証

2022年6月3日

【パナソニック】

パナソニックはRE100工場の実現に向けて実証施設を開所した。純水素型燃料電池を組み合わせることで、太陽光発電の不安定さを解消する。

純水素型燃料電池、太陽光発電、蓄電池が並ぶ実証施設

パナソニックは4月、純水素型燃料電池と太陽光発電を組み合わせた自家発電設備によって、同社草津工場内にある燃料電池工場で使用する電気を100%再生可能エネルギーで賄うための実証施設「H2 KIBOU FIELD」の稼働を開始した。実証施設は同社の5kWクラス純水素型燃料電池「KIBOU」を99台(495kW)、太陽光発電(約570kW)を組み合わせた自家発電設備と余剰電力をためるリチウムイオン電池(約1100kW時)で構成される。純水素型燃料電池に使用する水素は敷地内の液体水素タンク(7万8000ℓ)に貯蔵する。

99台の燃料電池は全数が常時フル稼働するわけではなく、半数を稼働させて、残り半数を休めるといった運用を行い、燃料電池への負荷を平準化しながらベースロード稼働させる。燃料電池工場の電力需要は、昼間が約600kW時、夜間が約300kW時。ピーク電力は約680kW。昼間は燃料電池と太陽電池、夜間は純水素型燃料電池が稼働する。これらにより、年間電力需要の約80%を燃料電池で賄う計画で、タンクにある液体水素は8日前後で使い切る。水素は岩谷産業が供給し、年間水素消費量は約120tに上る。

エネ設備の設置面積に制約 工場屋根への導入を想定

同実証では、発電設備の設置面積にもこだわった。太陽光発電の設置面積を同社の燃料電池工場の屋根と同等にしたのだ。実証後、普及を図るときには、制約のある敷地にもエネルギー設備を設置しなければならない。それでもRE100が実現できるかを試すのが狙いだ。太陽光発電は発電量を確保するのに一定の敷地面積が必要となる。また、天候に左右される不安定電源でもある。同社の水素型燃料電池は連結して使用するため、屋上の敷地面積や形状に合わせて設置できるほか、太陽光発電との立体設置なども対応可能だ。

このほか、独自のエネマネシステムを導入。電力需要に追随し、太陽光の発電量から燃料電池の発電パターンを計画。電力の余剰や不足に対し蓄電池を活用する。こうして「系統からの電力を購入せずに運用できるか、挑戦していきたい」。同社スマートエネルギーシステム事業部の加藤正雄燃料電池/水素事業統括は意気込む。

水素を用いたRE100実現には再エネ由来のグリーン水素が不可欠となる。そうした水素サプライチェーン構築と同時に利活用に関する取り組みも重要だ。今回の取り組みがその大きな一歩を担うことは間違いない。