【イニシャルニュース】沈黙の資源燃料政策 昭和から戦略変わらず

2020年9月6日

1.沈黙の資源燃料政策 昭和から戦略変わらず

エネルギー政策の「脱炭素」転換方針を受け、大幅な人事異動が行われた資源エネルギー庁。長官、次長、審議官、電力ガス事業部長、省エネルギー新エネルギー部長が続々と交代する中で、唯一続投になったのが、南亮・資源燃料部長だ。

梶山弘志経産相が定例会見などで言及しているのは、再生可能エネルギーや石炭火力フェードアウトなど「脱炭素」関係ばかりで、資源燃料政策はおおむねスルー。そもそも記者側から質問が出てこないといった事情もあるが、先の通常国会で石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)法が改正されていることから「新国際資源戦略の展開も含めて、なぜもっと積極的に新政策を打ち出さないのか」(石油開発会社関係者)と見る向きも少なくない。

梶山経産相の関心は主に脱炭素だ

これについて、経産省OBのX氏はこう話す。

「わが国の資源戦略は昭和の石油公団時代から、基本的に変わっていない。つまり、資源はないけどGDP世界第二位の圧倒的な経済大国なので、石油ガス安定調達に向けて自主開発を拡大していくというものだ。しかし、その大前提はもはや崩壊しつつある。再エネ・省エネ分野の技術革新などでエネルギー需給のパラダイムシフトが進み、化石資源の供給過剰が鮮明化。また少子高齢化により、世界経済の中でのプレゼンスも年々低下している」

さらに続ける。

「米国、ロシア、中東諸国、中国を中心に国際情勢が激変している状況も踏まえて、資源調達戦略の抜本的な見直しが急務になっているにもかかわらず、今春発表された新国際資源戦略は『昭和時代』の発想を引きずったまま。JOGMEC法改正にお墨付きを与えるための対策にしか見えない」

現役官僚のZ氏も今の資源燃料政策に疑問を投げる。

「石油公団時代からの伝統がなぜ変わらないかといえば、おそらく資源開発分野にいる有力OBが旧来の発想のままイケイケの姿勢を見せているためだろう。世界のオイルメジャーの戦略は拡大からリスク管理へとシフトしている。しかし、経産省では新戦略や今回の人事を見ても、そうした大転換を行う状況にはなっていない。だから問題意識を持っている人たちも、沈黙せざるを得ないのでは」

資源エネルギー庁の「一丁目一番地」の仕事は、脱炭素というよりも資源戦略にあるはず。そこをなおざりにしてはならない。

2.J社のガス火力計画 荒唐無稽の指摘も

地方紙N新聞が8月、発電プラントの開発、建設、運営などを手掛けるJ社が九州のI市で2万kWのLNG火力発電所建設計画を進めていると報じた。

報道によると、建設予定地は造船所跡地で、海外からのLNGの受け入れ施設と発電所を建設。同地で受け入れたLNGをほかの火力発電所に供給する事業も実施するという。早ければ、2023年度にも、商業運転を開始する予定とのことだ。

ガス発電は、石炭や石油に比べれば環境負荷が低く、世界各地で産出されるため安定した調達も期待できる。しかし、同プロジェクトについて新電力のS氏は、「少し荒唐無稽な計画のように見える」と語る。

というのも、再生可能エネルギーの大量導入が進む九州エリアでは、既存の火力発電所でさえ稼働率が相当低く抑えられているのが実情。新たに建設したところで、コスト的に見合わない可能性が高いのだ。

電力小売り全面自由化後、過疎化が進む地方都市では、再エネの地産地消をはじめ、電力事業で地域活性化を目指す取り組みが加速している。約30人の雇用を見込んでいるという同プロジェクトも、地域経済への貢献が期待されるだろう。

ただ、I市ではかつて、バイオマス発電所の建設計画が持ち上がったものの、その後プロジェクトを主導した新電力R社の破たんで頓挫したことがある。リスクの高い発電事業での地域活性化は、不確実性が伴いそうだ。

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