【イニシャルニュース】沈黙の資源燃料政策 昭和から戦略変わらず

2020年9月6日

3.リニアに物言う知事 関係者からは理解の声

消費電力は「原発一基分」ともいわれ、需要拡大の面からも運転開始に大きな期待が掛かるリニア中央新幹線。しかしその実はルート問題、水脈などへの影響を巡り騒動になるなど、地元の関係者からは多くの問題点が指摘されている。

異論を唱える中心にいるのが、静岡県の川勝平太知事だ。彼の発言や行動に否定的なメディア報道は多いものの、「納得できる」と理解を示す人たちは少なくない。

地元の事情に詳しい専門家I氏は、技術面からリニア新幹線そのものに疑問を呈す。

「超高速で走るため、トンネルには新幹線以上の負荷が掛かる。さらに、それが地下1400mもの大深度に敷設する。果たして技術的に可能なのか」。さらにルート問題に加え断層が多くある中で、トンネル工事をどう進めるのかという問題もある。「JR東海がこれらの根拠をきちんと示さない限り、理解は得られないのではないか」と指摘している。

リニア新幹線は国家プロジェクトであり、政・財界の関係者は「地元に経済効果がある」との一点張り。しかし、科学的・合理的な視点を失った事業は将来に禍根を残すと、今までの多くの大規模プロジェクトが物語っている。C電力関係者からは「トンネル工事で出る大量の土砂の処分をどうするのか。驕りがあるのではないか」と、工事を前のめりに進めるJR東海への不満の声も聞こえてくる。

同じ公益的な事業として、JRとエネルギー業界には共通点が多い。中でも電力業界は、原発という「難題」を抱えている。リニア新幹線を巡る騒動を他山の石として、地元との向き合い方について再考すべきかもしれない。

4.需要家歓迎の越境競争 競争力ある大手電力は

「大手電力会社同士の越境競争は、今や当たり前の時代になった。業界内でタブー視されていた全面自由化以前とは、隔世の感がある」

こう話すのは、大手流通Y社で電力調達の仕事に携わるA氏だ。それによると、2000年に特別高圧部門が自由化されて以降、ダイヤモンドパワーやエネット、イーレックスなどPPSの新規参入が始まったが、大手電力が他エリアに進出する越境事例はゼロ。その後も高圧部門まで自由化範囲が拡大されたものの、大手電力間の競争は全く起きなかった。

「2010年ごろ、北関東地域にある施設で東北電力に購入を打診したが、さまざまな問題を理由に難色を示された。状況が大きく変わったのは、やはり東日本大震災の後で、小売り全面自由化や発送電分離が決まった15年前後から電力間競争が本格化し始めた。これに伴って選択肢が大きく広がったので、われわれ需要家にとっては大変良かった」(A氏)

業務用需要家のB氏によれば、首都圏では意外にもK電力やH電力がコロナ禍の最中で競争力を見せている。またT電力やC電力も、DR(デマンドレスポンス)やVPP(仮想発電所)などを活用した新契約で攻勢を掛けている。「価格や提案力を含めて、大手電力間の競争力格差が鮮明になってきたが、大手同士の真っ当な競争こそが、需要家利益を大きく増進させるのは間違いない」(B氏)

小売り全面自由化によって相互不可侵の業界秩序は崩壊したものの、需要家が主導する形で業界全体の活性化は着実に進展しているようだ。

5.安部首相に年内退陣説 次期候補に経産省が接触

新型コロナウイルス感染の終息が見えない中、疲労感が目立つ安倍晋三首相。8月17日に慶応病院に入院し、重病説が永田町界隈を駆け巡った。人間ドックの追加検診とのことだが、年内退陣説が説得力を持ち始めてきた。

次期総理・総裁は誰か―。有力候補は、世論調査で真っ先に名が上がるI氏と首相が推すといわれるK氏、A氏。だが、ある政界事情通は言う。「I氏、A氏は首相になる準備をし、覚悟がある。しかしK氏にはない」。永田町の動きに敏感な経産省は、「既にA氏、I氏とのパイプづくりに乗り出している」(事情通)という。

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