ITで電力の安定供給を守りながら 新規事業など攻めるところは攻める

2020年10月11日

開発・改修案件が増加 DX・デジタル化に今後期待

―一連の電力システム改革は貴社の事業面にどのような影響を与えていますか。

内藤 分社化に伴う開発・改修案件が増え、ここ2~3年は売上高が高水準となっています。分社化対応が一段落し、今後はDX・デジタル化を加速させます。

事業面では、営業活動の強化が求められています。従来は、中部電力主管部のニーズを同社情報システム部門が把握し、当社に一括発注されていました。分社後は各事業会社から、当社に直接発注されます。各社のニーズをとらえるためには、情報収集力・技術力・提案力の強化が必要です。体制整備、社員のスキルアップを急いでいます。

中部電力グループのITが進む方向性

―中部電力は昨年4月、新規事業を迅速に立ち上げることを目的に「事業創造本部」を設立しました。貴社の協力についてお聞かせください。

内藤 約20人の高度IT技術者を同本部に出向させています。例えば、「お客さま起点」をキーワードとする「コミュニティーサポートインフラの創造」に向けたサービス開発を支援しています。現在、中部電力で先端技術を活用したさまざまなサービスについて事業化の可能性評価を行い、具体化のフェーズに入りつつあります。

また、中部電力にとどまらず、グループ各社へ約80人規模のIT技術者を送り出し、効率的な技術導入をサポートしています。

―今後の電力業界のDX・デジタル化はどう進むと見ていますか。

内藤 今後はDX・デジタル化が加速し、データの利活用が進みます。中部電力グループでは、①エネルギーの安定供給を支える確実性や安定性を重視する領域(モード1)が大きいのが特徴ですが、この領域でもDX・デジタル化が加速します。さらに今後は、②ITを使った新しいサービスなど、「開発スピード」や「使いやすさ」を重視する領域(モード2)が拡大します。

これら二つの領域と、③電力設備の制御に関する領域(制御系)との連係が進み、次世代型ネットワークやレジリエンス強化に向けたIoTやAI、ウェブ、モバイル化などが進展します。

同時に④コミュニティーサポートインフラなど、グループ以外との連係も進みます。これらに伴いセキュリティー対策も高度化・複雑化するため、さらなる対応強化が必要です。また、新たなサービスについては当社が先行導入し、実証のうえ、グループ各社へ素早く展開しています。

ITで地域発展に貢献 グループ第4の柱を目指す

―今後の抱負をお願いします。

内藤 電力業界には、固有のシステム(レガシーシステム)がまだ多く残っています。エネルギーの安定供給を支えるこれらのシステムの開発・保守は、ラストリゾートを担うIT会社としての重要な責務である、ということを忘れてはなりません。

一方で、中部電力と一体となってITを使った新しいサービスの提供、新成長分野の事業化などに取り組み、地域の発展に向けて貢献していく必要があります。

中部電力グループ唯一のIT企業として、グループ全体の生産性向上や、全体最適を図るためのDX・デジタル化を提案していく方針です。短期的視点で売上・利益減となっても、中長期的にグループの利益向上、グループ外へのキャッシュアウト抑制につながる提案を積極的に進めます。

ITを攻めるところは攻め、既存領域のシステム開発・保守といった守るところは最後まで守り抜き、ラストリゾートとしての役割も果たすことが当社のミッションだと考えています。

社員には「分社化した三つの事業会社に続いて、ITが第4の柱となる時、その中核的役割を果たしている当社の将来像が見えてくる」と伝えています。

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