LPガス「調達地多様化」で安定供給支える/アストモスエネルギー

2020年12月4日

インタビュー:小笠原 剛/アストモスエネルギー社長

元売りとして日本のLPガスの安定供給を支えているアストモスエネルギー。デジタル化や脱炭素への取り組みなど、小笠原剛社長に多岐にわたって話を聞いた。

1962年3月生まれ。北海道大学法学部卒。85年三菱商事入社、2008年石油原料ユニットマネージャー、14年石油製品部長、17年石油・炭素事業本部本部長を経て19年アストモスエネルギー代表取締役副社長、20年代表取締役社長

―2021年から始まる新たな中期経営計画のメインテーマは。

小笠原 時代の変化やお客さまのニーズの変化に沿うサービスの提供を通じて、企業価値をさらに高めることを目的に据えた計画にしていきます。

 国内では少子高齢化、デジタルトランスフォーメーション(DX)革命など、市場環境を大きく変化させる事象が起きています。変化に対応しながら成長を遂げるには、特約店サポートのさらなる充実化が重要です。具体的には、特約店社員を対象としたオンライン研修の充実、需要減および人手不足の解決に向けた物流統合、AI、低消費電力広域無線(LPWA)を活用した配送最適化、顧客維持・拡大に向けた各種施策提供を行っています。

 また高度な安全性を維持するために、グループ会社および社有充塡所の運営で培った保安業務のノウハウを特約店に提供する取り組みも始めました。社会の変化に適切に対応して、お客さまに最適なサービスを提供していきます。

―物流合理化策や業務提携に向けた足元の取り組みと、実感する課題を教えてください。

小笠原 現在、LPWAを活用した残量管理、AIを用いた配送ルートの最適化やシステム連携の検証を進めています。

 また、昨年は東北、中国、九州エリアで業務提携し、合理化を実施しました。しかし、LPガス業界は需要減や人手不足にさらされており、今後も安定供給を維持していくためには、系列を超えた物流統合が必要です。今後も効率化と安定供給を両立すべく、取り組んでまいります。

リモートツールを積極活用 時代に合う業態を模索

―昨今のコロナ禍では、どのような対策を行いましたか。

小笠原 取引先や協力会社の皆さまからの応援もあり、感染拡大前から関係会社へのマスクや消毒液などの感染予防品の供給を行いました。さらに配送先の担当者との配送伝票の授受時に対面しないなどの対策を講ずることで、感染者なく安定供給を継続できています。

 これまで取引先とは顔を合わせてコミュニケーションを取ってきましたが、コロナ禍によって取引先と直接会うことが難しくなりました。そのため、ウェブツールを積極的に活用しながら面談や販売施策の提供などを実施しています。

 世の中の働き方改革や営業手法が変わっていく中で、当社として取引先と一緒にどう取り組んでいけるか、社員がどんな働き方や役割をするべきかを検討しています。取引先、協力会社とは、今まで以上に強固な関係構築をしていけるようにしたいと考えています。

―海外事業において、コロナ禍の影響はありましたか。

小笠原 海外では、コロナ禍により世界各地で外航船乗組員の乗り降りが制限されており、船員の交代が難しくなっています。安全運行のためにも外航船乗組員の労働環境の改善は大切な課題で、できる限り船主に協力したいと考えています。また輸入に際しては、通関書類などを関係省庁に持ち込まなければなりません。感染拡大防止と関連業務従事者の安全確保の観点から、手続きのペーパーレス化を推進するよう、業界団体と連携して働き掛けていきます。

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