LPガス「調達地多様化」で安定供給支える/アストモスエネルギー

2020年12月4日

調達先の一極集中リスク 多様化で安定供給実現へ

―燃料調達では多くの企業が中東から米国への切り替えを行ったため、米国一極集中が進んでいることが新たな課題として挙げられています。どのように捉えていますか。

小笠原 調達先の一極集中はエネルギー安全保障、安定供給の観点でも大きな課題です。

 昨年は米国積出港で悪天候や輸出基地周辺で火災が発生したため、長期にわたって混乱が生じました。こうした事態に加えて米国ではハリケーンが襲来するリスクもありますし、今後LNG船の交通量増加が見込まれているパナマ運河でのLPガス船の通峡枠確保も課題となります。

 当社は昨年も豪州やカナダのサプライヤーから新規調達を開始するなど、中東や米国など特定地域のみに依存することのない調達体制を構築してきました。限られた船団で各地からLPガスを適時に調達することは容易ではありませんが、既存の供給地の再評価や新規供給地からの調達検討など、調達先の多様化を通じて安定供給を実現していきます。

―業界全体が抱える課題について、どのような認識を持っていますか。

小笠原 DX技術の進化への対応もそうですが、欧州では旧来型の化石燃料に対して銀行や政府からの融資が停止されるなど、世の中は脱炭素に向けて大きく変わろうとしています。LPガスは可搬性、貯蔵性に優れていることからバックアップ電源として再生可能エネルギーとの相性が良いと考えています。LPガスも含めた最適なエネルギーシステムの構築や、バイオLPガスや実質CO2フリーLPガスなど、環境に対する取り組みも進めたいと考えています。

 業界全体で見れば脱炭素化に向けた活動はこれからです。当社が業界をけん引するつもりで今後3年の間に社内体制の再構築を行い、行政にも情勢変化に適した支援を要望していきます。

多くの船団を利用しながら安定調達を支える

―LPガスの良さについて、最後に一言お願いします。

小笠原 大都市圏に住む多くの方は都市ガスを利用しているかと思いますが、実はLPガスは国内で2300万世帯(全世帯数の40%)、日本の国土の95%をカバーしています。当社はこうしたLPガス利用者のライフラインをしっかりと守っていく使命を担っています。LPガスの物流は人の力で支えられており、可搬性・機動性の良さが災害に強いと言われる理由です。東日本大震災の被災地でいち早く復旧した燃料はLPガスでした。災害大国の日本においては、分散型のエネルギーに対する需要はさらに高まっています。こうした観点からもLPガスが持つ魅力をアピールしていきます。

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