暮らしの課題を浮き彫りに リフォームを繰り返す集合住宅

2020年12月30日

自在の家には「ウチドマ」と呼ぶ共用スペースが設けてある。部屋をつなぎながら隔てる空間で、屋外でもあり、屋内でもある新たな価値観を示すスペースだ。このほか、新たな建具を用いることで風が通る住まいを実現し、屋外の気持ちよさなど家の中にいながらにして感じられる仕組みなどが取り入れられている。

共用スペースとなる「ウチドマ」

今後は超高齢化社会に対応 単身者向け住宅に注目

住戸をリフォームすることで、建築システムの有効性や施工性などを検証し、改修ごとに課題解決に向けて新たな提案をしていく事例もある。その一つが「拡大家族の家」と名付けられたシェアハウスから「住み継ぎの家」という少子高齢社会という社会課題をテーマにした住戸に造り替えたものだ。居住を想定する家族が、共働き子育てに始まり、成人父子同居、高齢母子同居などのそれぞれの生活モデルを想定し、可変するインフィルを変更し、家族の在り方が変わるごとにリフォームしていく。

初期に造られた住戸「仕事場のある家」は自宅の玄関を通らずに、外から直接仕事部屋に入ることができる在宅勤務をテーマにしたもの。現在のように、コロナ禍で在宅勤務が増える時代であれば重宝されそうだが、当時同社には在宅勤務制度がなかったため、仕事部屋を利用する機会はなく、子ども部屋として利用されていたそうだ。そこで、専門家が自然建材を選定した「すこやかな家」に生まれ変わった。外壁を移動することで風通しの良いベランダを広くし、水回りの位置を変えることで風通しの良い浴室に造り変えられた。

NEXT21はこれらリフォームや設備開発などハード面だけでなく、現代にマッチした新たな価値観、仕組みといったソフト面を生み出すきっかけにもなっている。例えばプライバシーラインの設置にはいち早く取り組んできた。

「要介護の家族がいると、ヘルパーなど業者が家に立ち入りますが、作業してもらいたいエリアとプライベートなエリアを区分けできれば、本人含め家族は安心します。そうした区別する仕組みづくりは今後より一層重要になるでしょう」と纐纈マネジャーは話す。

今後の住戸テーマについては、超高齢化社会に向かうことから「単身者向け住宅に注目しています。複数人の家族から一人という最小単位で家が造られていきます。そうした時に何が求められるのか、研究していきたい」と加茂主席研究員。NEXT21はその時代が生むテーマや課題を通じてリフォームされ、新たな研究が続けられていく。

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