全ては需要家のニーズのために 総力上げて挑んだ大型プロジェクト

2021年1月1日

競争力と事業性を両立 総合エネルギー拠点を設計

 需要家との合意形成ののち、建設作業の指揮を執ったのは、TGESエンジニアリング本部地域エネルギー設備部建設プロジェクトグループの山田有喜課長だ。

 山田課長は、産業分野向け営業部門を技術的な側面から支える業務に長年従事してきた。これまでには神奈川県南足柄市で操業する工場のユーティリティーサービス拠点の立ち上げや設備管理などに携わっている。本事業にも計画段階からプロジェクトに加わり、導入設備の検討などを行ってきた。

 とはいえ、清原工業団地スマエネ事業は、5770kWのガスコージェネ6基、7tクラスの貫流ボイラー7基を擁する国内でも屈指の規模を誇る熱電供給プロジェクトだ。需要家への安定供給を確保する上で、設備の選定にもさまざまな苦悩があった。

「安定供給が重要なのは大前提ですが、それに伴い設備投資が過剰になってしまうと、当社の価格競争力が落ちてしまいます。こうした安定供給性を損なうことなく、コストの問題に対しどのような最適解を導き出すかは、大きな課題でした」(山田課長)

 こうした設備設計のみならず、実際の工事においても、多くの困難が立ちはだかった。

 当然のことながら事業に参画した各社工場は、ほかの敷地から熱電供給を受ける想定で設備が造られていない。そのため、自営線や熱供給の配管をどこに通すのか苦慮したという。「当初は洞道による施工も候補にありましたが、コスト的に合わず検討から外しました。また工事中に、お客さまから提出された資料にはない埋設物が露呈するなど、計画変更を余儀なくされることも多く大変な状況でした。工事を行いながら図面を引き直すことも多く、変更の連続でしたね」と山田課長は苦笑する。

 需要家の工場では受電設備の切替工事を行う必要があった。電力供給への支障を来すことなく、各社の操業への影響を最小限に抑えるスピード工事だ。これについては早期段階から需要家、工事業者、電力会社と綿密なスケジュール調整に当たった。さらに工事中には超大型台風が数度襲来するという過酷な状況にさらされたが、十分なリスク想定と事前対策が功を奏し、大きな被害が出ることもなく、無事に工事を終えられたそうだ。

山田有喜 課長

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