【日本原子力発電 村松社長】原子力は現実的な選択肢 地域の皆さまの理解と技術・人材を維持

2021年2月1日

カーボンニュートラル宣言により、現実的な選択肢である原子力発電にスポットライトが当てられている。
原子力発電のパイオニアとして、事業の進展に全力を尽くす。

むらまつ・まもる
1978年慶大経済学部卒、東京電力入社。2008年執行役員企画部長、12年常務執行役経営改革本部長、14年日本原子力発電副社長、15年6月から現職。

志賀 菅義偉首相が2020年10月、所信表明演説で「50年までに温室効果ガスの排出を全体でゼロにする」と宣言しました。そのために再生可能エネルギーだけでなく、原子力発電を含めてあらゆる選択肢を追求すると述べています。原子力発電を専業とする会社の社長として、首相の宣言をどう受け止めましたか。

村松 大変、前向きな政策目標を掲げられたと思います。中でも、カーボンオフセットではなく、カーボンニュートラルを目指すと言われたことを、重く受け止めています。

カーボンオフセットであれば、温室効果ガスの排出を減らす努力をしても、どうしても残る排出量について、その分を減らす削減活動などに投資すればよい。一方、カーボンニュートラルは、原則として温室効果ガスを排出しないということで、石油や天然ガスなどの化石燃料を利用するときも、炭化水素から水素を分離し、炭素部分は分離・回収して貯留するなどの技術開発が必要になってくると思います。

志賀 その点は、今後の技術開発に期待する声があります。

村松 それまでは、脱炭素技術として確立した再エネとともに、原子力発電の選択肢を除外することは考えられないと思っています。

志賀 電力中央研究所が、以前の目標である50年温室効果ガス80%削減の目標を達成するには、原子力発電は50年に2900万kWの設備容量が必要になると報告しています。100%削減になったのですから、より設備容量を増やさなければならない。

ゼロエミ達成に課題 新増設が不可欠に

村松 これから経済産業省の審議会などで、50年の原子力発電の設備容量について議論が行われ、定量的な数字が出てくると思います。まずは、それを待ちたいと思っています。

ただ、ベースとなるのは2900万kWという数字であると思っています。そのためには、原子力発電の新増設、リプレースが不可欠になると思っています。

志賀 リプレースは間違いなく欠かせないでしょう。しかし、その前に既存の原発の再稼働が必要になります。東海第二、敦賀2号機の再稼働に全社を挙げて取り組んでいると思います。

菅首相の宣言により原子力発電の必要性が認識されて、世論も変わっていくのではないかと思っています。現状をどう見ていますか。

村松 東海第二発電所は、18年に新規制基準への適合など原子力規制委員会による一連の許認可を取得しています。

その後、19年9月にテロ対策施設である特定重大事故等対処施設(特重)の設置許可の申請を行い、20年11月にはそれまでの審査の状況を踏まえて補正申請を行いました。

このように東海第二発電所については、審査は特重にまで進んでいます。いまは受電会社のご理解を得て、安全性向上対策工事を着実に進めている段階です。

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