【日本原子力発電 村松社長】原子力は現実的な選択肢 地域の皆さまの理解と技術・人材を維持

2021年2月1日

敦賀3・4号は「宝」APWR建設を実現へ

志賀 冒頭の首相のゼロエミッション発言に戻りますが、目標を達成するとなれば、やはり原子力発電の新増設が欠かせません。敦賀3、4号機の増設に着手していますが、どう取り組んでいく考えですか。

村松 敦賀発電所3、4号機には非常に大きな先行投資を行っています。審査中のプラントという扱いになっており、土地造成は既に終わっています。当社としては将来の「宝」であり、何としても計画を進めたいと思っています。

志賀 採用するAPWR(改良型加圧水型炉)は、日本では初めての炉型になります。

村松 そうです。三菱重工業製のAPWRを建設する計画です。いま日本でPWRの技術を持っているのは三菱重工しかありません。ですから、その今の再稼働の主流、なおかつ世界の原子力発電の主流になっているPWRの技術と人材を維持していくためにも、敦賀発電所3、4号機の増設は何としても実現させたいという思いです。

志賀 これから建設するとなると、新規制基準に適合した設計ができることになりますね。

村松 もちろん、そうなります。既存の発電所に設備を追加する場合に比べ、最初から新規制基準を組み込んだ設計をする場合では、より合理化した設計ができます。

より一層安全性を高めるための技術の採用など、敦賀発電所3、4号機は、チャレンジができる炉だと思っています。

志賀 敦賀市や周辺地域の皆さんの3、4号機増設への期待は大きいと思いますが。

村松 敦賀発電所2号機の審査はまだ継続中ですが、敦賀市では敦賀発電所1号機、高速増殖炉「もんじゅ」、新型転換炉「ふげん」の廃止措置が進んでいます。いま、敦賀市で運転している原子力発電所はありません。ですから敦賀発電所3、4号機増設は、商工会議所をはじめ、地元の期待が非常に大きいと思っています。

当社はこれまで敦賀市の皆さまにご理解をいただき、事業を進めてきました。敦賀市は水素などのエネルギー多元化を目的とした「ハーモニアスポリス構想」を策定され、原子力だけに依存しない街を目指していますが、これからも、当社事業にご理解をいただき、敦賀発電所2号機の再稼働と3、4号機の増設を行い、敦賀市で原子力発電事業を進めていきたいと思っています。

志賀 原子力発電がカーボンニュートラルで重要な役割を果たすことは間違いないと思います。原子力発電専業会社として、日本原子力発電に期待しています。ありがとうございました。

対談を終えて:2050年までのカーボンニュートラル達成には原子力発電所の新増設が欠かせないことから村松社長は、現在安全審査中の敦賀3、4号は“将来の宝”と胸を張る。採用する炉型はわが国初の改良型加圧水型軽水炉で、新規制基準を最初から組み込んだ原子力発電所となる。建設を担う三菱重工とともに持てる組織・人材を総結集しこれに取り組む。再稼働を目指す東海第二と敦賀2号は規制委員会の審査対応に全社で取り組んでおり、原子力専業会社として地域・国民の期待に応えねばならないとする強い意志を感じた。(本誌・志賀正利)

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