【四国電力 長井社長】電力の安定供給と魅力あるサービスで四国の発展に寄与する

2021年3月1日

電力の安定供給を担うとともに、低炭素化やデジタル技術で地域経済をけん引する四国電力。
環境対策と電力産業の進化・発展が、これからの成長の鍵を握る。

ながい・けいすけ
1981年京都大学大学院工学研究科修了、四国電力入社。常務取締役総合企画室長、取締役副社長総合企画室長などを経て2019年6月から現職。

志賀 厳冬により電力需要が増加するなどし、全国的な需給ひっ迫に陥りました。

長井 まずは、お客さまにご心配とご不便をおかけしたことに対してお詫び申し上げるとともに、1年で最も寒い時期に節電にご協力いただいたことに深く感謝いたします。今回のひっ迫の要因については、厳しい寒波の影響による電力需要の増加に加え、悪天候による太陽光の発電量低下や、一部の事業者の発電機停止により火力発電所の高稼働が続き発電用燃料の在庫が減少したことなどが重なったためと認識しています。世界的にLNG需給がひっ迫していたこともあり、このまま寒さが続けば発電用燃料が底をついてしまうのではないかという不安の中での厳しい需給運用となりました。

志賀 具体的に、どのような対策を取られたのでしょうか。

長井 安定供給を確保するために、考え得る最大限の対策を講じてきました。LNGや石油の在庫量が急速に減ったため、石油元売りや商社といったさまざまな事業者と協議し、燃料の追加調達に奔走しました。燃料調達には時間を要するため、当社の石炭火力発電所を過負荷運転したり、エリア内の発電事業者に対し供給量の積み増しを依頼したりするなど、供給力側の対策に尽力しました。1月末にLNG船が予定通り到着したことで燃料不足はおおむね解消され、2月には火力発電による供給力を安定的に確保できるようになりました。

電力の安定供給確保へ ベストミックスの重要性

志賀 まさに想定外の事態だったのでしょうか。

長井 発電設備の容量は十分でしたし燃料も相応に用意していました。しかし、伊方発電所3号機が稼働していないこともあり、年末からの非常に厳しい寒さで想定を上回るスピードで燃料を消費していきました。供給量の不足分は、日本卸電力取引所(JEPX)からの調達で賄う計画でしたが、市場に供給される電力量も減少していたため、非常に厳しい需給運用を迫られることになりました。全国的に燃料不足に陥るという危機的な事態への備えが結果として十分でなかったことは、今後の教訓としなければならない点です。

志賀 今回の事象を踏まえ、今後はどのような対策が必要になりますか。

長井 今回の電力需給のひっ迫は、電源種のみならず、火力燃料のベストミックスの重要性を改めて強く認識する機会となりました。再生可能エネルギー、原子力、そして火力の中でも石炭、石油、LNGがバランスよく維持されていることが理想です。今回の経緯、原因などの詳細は国の審議会で検証が進められていますが、当社としてもその結果を踏まえ、安定供給の確保に向けてさらなる努力を重ねていきます。

志賀 電力の安定供給には、新型コロナウイルスの感染防止対策も欠かせません。どのような対策を講じていますか。

長井 社内の感染防止については、各職場でのマスク着用や手指消毒、3密回避など基本的な予防措置を徹底しています。とりわけ、ライフラインを担う事業者として、四国電力送配電と連携し、発電所や系統運用にかかわる当直員の感染防止対策として、当直の交代を非接触の対応とするほか、当直員以外の従業員の中央制御室や給電指令所への入室を制限するなど、細心の注意を払いながら、一方で万一に備えたバックアップ体制も整えるなど、安定供給に支障をきたすことのないよう万全の対策を講じてきました。こうした取り組みにより、安定供給の責任を全うすることができており、社員一人ひとりの日々の努力にも感謝しているところです。今後も気を緩めることなく、引き続き緊張感を持って取り組んでいきます。

志賀 昨年菅義偉内閣が誕生し、2050年脱炭素化に向け大きく動き出しました。非効率石炭火力のフェードアウトの方針も固まり、電力業界にも大きな影響を与えそうです。

長井 脱炭素化に向けて菅首相が打ち出した「2050年に温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」との目標は、これまでの取り組みの延長では到底達成できない大変チャレンジングなものと受け止めています。その実現に向け、当社としても電源の低炭素化や電化の促進など、現状の取り組みをさらに加速するとともに、新たな技術開発にも積極的に取り組んでいかなければなりません。

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