【四国電力 長井社長】電力の安定供給と魅力あるサービスで四国の発展に寄与する

2021年3月1日

1月末には坂出発電所向けの燃料を積載したLNG船が到着。厳しい需給状況が改善された

志賀 火力の脱炭素化には、水素やアンモニアの混焼やCCS(二酸化炭素の回収・貯留)が有力視されています。

長井 エネルギーの安定供給維持のためには、「S+3E」の観点が欠かせません。そのため当社は、23年の運開を目指し愛媛県西条市の西条発電所1号機(亜臨界圧、15・6万kW)の超々臨界圧へのリプレース工事を進めるなど、老朽化した非効率石炭火力の高効率化を図っています。

 中長期的にみても、自然条件により出力が大きく変動する再エネのさらなる導入拡大を図りながら電力の安定供給を確保するために、同期化力があり、かつ調整力に優れた火力発電の役割がより一層重要性を増すことになります。どの技術が実現可能かを見極めるにはまだ時間がかかりますが、水素やアンモニア、CCSなどの新技術を追求し、脱炭素化を目指していくことになるでしょう。

再エネ開発へ体制強化 30年度までに50万kW

志賀 再エネの開発目標についてはいかがでしょうか。

長井 既存水力の最大限の活用に加え、四国域内に留まらず、域外や海外も含めた各地において、風力(洋上・陸上)、太陽光などの導入拡大に努めることで、30年度までに50万kWの開発目標を達成できるよう取り組んでいます。昨年11月には、再生可能エネルギー部に国内開発案件の発掘から、事業性評価、工事計画・管理、保守などまで一気通貫に行う専任組織として「開発推進室」を新たに設置し、この開発目標の確実な達成に向けた体制を強化しました。新体制の下、まずは目標の早期達成に向けて鋭意取り組んでいるところです。

志賀 電力の安定供給、そして脱炭素社会の実現に向け原子力の重要性も増しています。

長井 今回の需給ひっ迫に際してはあらゆる供給対策を実施することはもとより、お客さまに節電をお願いしました。さまざまな対策を講じることで何とか乗り切れたものの、電力の安定供給という観点からも、将来の温暖化防止の観点からも、伊方発電所の重要性を改めて痛感しました。

 これから2050年を見据えた長期的視点でエネルギー政策が議論されるものと認識していますが、当社としては、広島高裁における運転差止仮処分決定の取り消しや、特定重大事故等対処施設の完成など、喫緊の課題に全力を挙げて取り組むことで、伊方3号機の早期の運転再開を果たし、安全・安定運転の実績を着実に積み重ねながら、地域の皆さまのご理解をいただいた上で、原子力の最大限の有効活用を通じて、CO2の排出量削減に貢献していきたいと考えています。

志賀 原子力の新増設やリプレースについても検討していくことになるのでしょうか。

長井 新増設・リプレースについては、国でも具体的な議論がなされておらず、事業者としてお答えできる段階にありませんが、将来にわたり原子力を継続的に活用していくためには、より安全性を高めた軽水炉に加え、現在、国内外で進められている新型炉の研究開発やイノベーションなど、技術の潮流もしっかりと見極めていく必要があります。今後、次期エネルギー基本計画の策定に向けた検討の中で、原子力利用の今後の方向性について、具体的な議論が行われることを期待しています。

志賀 電力小売り全面自由化を含む電力システム改革をどう総括し、今後の課題についてどのように考えていますか。

長井 16年4月の小売り全面自由化により、多様な業種から全国で700を超える事業者が新規参入し、お客さまの選択肢の拡大や小売事業者間の競争が進みました。また、20年4月に送配電事業が法的分離され、送配電網の利用に係る競争の中立性・公平性の確保が可視化されました。

 これにより、電力供給における「発電」「送配電」「小売り」の機能が分離され、また、電気が持つさまざまな価値を市場を通して取引する仕組みが導入されることで、電気事業がそれまでの垂直統合一貫体制から、多くのプレーヤーが各々の役割・責任を果たすことで安定供給が保たれる多元的な姿へと変貌しました。

 送配電事業の法的分離を終えたことで、電力システム改革は一つの区切りを迎えましたが、われわれとしては、新たに創設された各種市場に適切に対応することはもとより、デジタル技術の進展や脱炭素化に向けた世界的な潮流、さらには、コロナ禍を契機として社会経済活動のあらゆる面で起きるさまざまな構造変化に対応していくことが求められます。

 こうした中、競争分野である小売りや発電事業にとどまらず、大規模電源から送配電網を通してお客さまに届けるという従来の電力供給の形自体が大きく変わりつつあり、送配電事業においても分散化や電気の流れが双方向化していくことが予想されます。そうした変化を将来の成長・発展のための事業機会と捉え、電気事業のさらなる体質強化に邁進していきます。

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