【特集3】革新的技術で脱炭素社会へ挑戦 メタネーションの研究開発を促進

2021年3月4日

2050年カーボンニュートラル実現には、都市ガス業界の脱炭素化も叫ばれ始めている。 水素・メタネーション分野でイノベーションを起こし続ける、大阪ガスの取り組みを紹介する。

大阪ガスは、燃料を燃やすことでCO2回収・水素製造・電化という、脱炭素社会に欠かせない三種を同時に実現する「ケミカルルーピング燃焼技術」の研究を、石炭エネルギーセンター(JCOAL)と共に進めている。

この研究は2020年11月に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受けている事業。そもそもケミカルルーピング燃焼技術とは、石炭やバイオマス燃料の燃焼に必要な酸素を金属酸化物(酸化鉄)から供給することで、追加的なCO2の分離・回収設備がなくても、高純度のCO2を取り出せる技術だ。

燃料を燃焼させ酸素を失った酸化鉄は、高温で水蒸気と触れさせると、水蒸気から酸素を抜き取り水素が生成される。また水蒸気と反応しても、なお酸素不足の状態にある酸化鉄は、再度空気に触れることで高熱を発しながら酸素を得て、燃料との反応前の状態に戻り再び一連の反応を繰り返すことができる。空気中の窒素は反応しないため高純度の窒素も得られる。

24年度末までの期間で取り組むNEDO委託事業では、石炭やバイオマス燃料をこの技術で燃焼させてCO2と気体水素を製造するプロセス実証試験を実施する予定だ。

グリーン水素も製造可能 自家発利用で資源を生産

大阪ガスのガス製造・エンジニアリング部プロセス技術チームの横山晃太マネジャーは、「もともとは石炭のクリーンな発電技術としてJCOALが主体となって研究してきた技術ですが、バイオマス燃料にも応用できないかということで当社も実証に参画しています。水素の製造も行えるので、燃料を燃やして電気と熱を同時に生む『コージェネレーション』ならぬ、電気・CO2・水素、という三つの資源を生む『ポリジェネレーション』技術です」と胸を張る。

設備は①酸化鉄と空気中の酸素を反応させて高温の熱と窒素を発生する「空気反応塔」、②酸化鉄中の酸素が燃料と反応しCO2を発生する「燃料反応塔」、③燃焼後の酸化鉄が水蒸気と反応し水素を発生する「水素生成塔」から成り、酸化鉄を①~③のプラントで繰り返し化学反応させる。

同委託事業実施期間に製作する試験装置に投入する燃料のエネルギー量は300kWで、水素の製造能力は毎時約35㎥。同社ガス製造・エンジニアリング部プロセス技術チームの植田健太郎氏は「水を電気分解して製造する方式よりも、安価に水素を製造できるものと見込んでいます」と話す。

ポリジェネレーションのメリットは、安価に水素を製造できることだけではない。横山マネジャーは「この技術にバイオマス燃料を使った場合、グリーン水素および電気だけではなく、CO2や窒素を製造できます。工場などに導入すれば設備をCO2フリーの電気で動かせるだけではなく、産業用途にも水素やCO2の地産地消を行えます」と説明する。

ビジネス化に向けては、工場向けに設備を導入し、同社がエネルギーマネジメントサービスの提供を行うことや、集中型のプラントを建設して各種製品を市場に販売することなどを視野に入れている。25年以降の商用化を目標に研究を進めていく構えだ。

ケミカルルーピング燃焼技術の仕組み

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