【特集3】革新的技術で脱炭素社会へ挑戦 メタネーションの研究開発を促進

2021年3月4日

革新的なメタネーション 柔軟な設備設計が可能に

また同社は新型の固体酸化物形電気分解素子(SOEC)を用いた「革新的メタネーション技術」の研究も進めている。

一般的なメタネーションでは、再エネ電気と水電解装置で水素を製造したのち、サバティエ反応装置と呼ばれる設備で水素とCO2を反応させてメタンを製造する。しかし、水電解装置とサバティエ反応装置のそれぞれで発熱によるエネルギー損失が生じるため、再エネ電気のエネルギー量を100%とした場合、製造されるメタンのエネルギー量は55~60%程度まで落ちるという課題があった。

一方、SOEC技術を用いた革新的メタネーションでは、水素などの生成とメタンの製造設備を一体化し高効率製造が可能となっている。具体的には、①SOEC素子で水蒸気をCO2と共に電気分解(共電解)し水素とCOを製造、②水素とCOからメタンを製造、③メタン製造時に発生する排熱を、①の共電解に必要な水蒸気の気化熱に有効利用する、という大きく三つの工程で運用する。これにより、従来使われてこなかった製造過程で発生する熱の有効利用が可能になった。

こうした工夫もあり、SOECによるメタネーションは再エネのエネルギー量100%に対し、メタンのエネルギー量を85%以上に引き上げられると期待されている。

だが、このシステムをガス製造プラントとして大型化するためには、従来型のSOEC素子は全体がセラミックスで構成されており、コスト抑制やスケールアップの実現が課題となると考えられてきた。

大阪ガスが開発した新型のSOEC素子は、こうした課題の克服に適している。同社エネルギー技術研究所の大西久男エグゼクティブリサーチャーはこう話す。

「ホーロー食器のように金属板の表面を薄いセラミックス層で覆う構造とすることで、性能を落とすことなく素子に使うセラミックス材料量を約9割削減しました。また金属板で構成されているので耐衝撃性に優れ、加工も容易となり多数の素子をつなげやすくなったため設備のスケールアップも容易と期待されます。将来、この技術の確立後、実用化設備の形態として分散設置型や大規模集中設置型などを想定していますが、後者の設備数台で、当社の都市ガスの年間供給量を製造できるとの試算もあります」

さらに新型SOEC技術は、メタンだけではなく水素の製造や、各種化学合成設備と組み合わせることにより、アンモニア、LPガス、液体燃料などの高効率製造にも展開可能だ。コンビナートや発電所、ごみ焼却施設などのCO2が大量に発生する施設に隣接することで、グリーン燃料などの製造供給拠点を作り出せる可能性を秘めている。

大西エグゼクティブリサーチャーは「多様な燃料・原料製造に活用することもできますので、新型SOECはさまざまな側面で社会に貢献できると考えています」と語った。 同社はパイロットスケール試験を、30年までに実施すること目指している。イノベーションが加速することで、水素社会はより現実味を増してくるだろう。

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