【沖縄電力 本永社長】CO2実質ゼロ化へ着々と布石打ち 高いハードルに挑戦

2021年4月1日

PVと蓄電池を無償設置 アグリゲーターに出資も

志賀 PV−TPO事業の反響はどうですか。

本永 1月に、一般戸建住宅のお客さま向けにPV−TPO事業「かりーるーふ」を4月1日から開始すると発表しました。同様のサービスはいくつかありますが、蓄電池まで含むものは大手電力会社グループで初となります。

 グループ会社の沖縄新エネ開発が、第三者所有モデルでお客さまにPVや蓄電池を無償で設置し、発電・蓄電された電気をおトクな料金でご利用いただくもので、供給が足りない分の電気は当社から購入できます。50人を対象に事前申し込みを募集したところ、1000人を超える申し込みがありました。並行して事業所向けのサービス提供についても協議を重ねており、よい感触を得ています。

志賀 同時期に CO2フリーメニューの提供も始めますね。

本永 4月1日から原則高圧以上の法人向けに、自社バイオマス発電や、県内の太陽光などに由来する非化石証書を用いてオフセットする「うちな~CO2フリーメニュー」の提供を始めます。木質バイオマス混焼では沖縄県内で発生した建設廃材などを加工したペレットを活用しています。また固定価格買い取り制度(FIT)の買い取り期間が順次満了を迎え、県内でCO2フリー価値を持つ電源が増加しています。こうした沖縄の資源を活用したメニューとなります。

 並行して昨年12月、アグリゲーション事業を展開するネクステムズの株式を取得しました。宮古島地域を中心にPV、蓄電池、エコキュートなどを販売する同社は、分散型電源や可制御負荷(供給側の要請で制御可能な負荷)の遠隔監視・制御を実証するなど、アグリゲーション事業のトップランナーとして高い評価を得ています。 同社とは、宮古島系統の来間島において、共同で地域マイクログリッド構築事業に取り組んでいます。平常時には、太陽光発電などの再エネと蓄電池を活用して当該エリアへ電気を供給、災害による大規模停電などの非常時には、大元の送配電ネットワークから切り離し、自立的に当該エリアへ電気を供給することを可能とする新たなエネルギーシステムです。同社の知見を最大限に活用し、再エネ主力化を推進していきます。

 昨年12月には、SDGs(持続可能な開発目標)の理念の下、本県における50年の持続可能な脱炭素社会の実現を目指して、県と連携協定書を締結しました。これまで以上に緊密に連携・協力し、50年脱炭素社会の実現や諸課題の解決に向けた取り組みを進めていきます。

志賀 選択肢は本土よりも限られますが、ネットゼロに向けた布石を着々と打っているわけですね。

ガス導管整備を推進 ESP拡大にも注力

志賀 中期経営計画(19~21年度)の進捗を説明いただけますか。

本永 ①グループ収益拡大、②徹底したコスト低減・効率化、③エネルギー安定供給のさらなる強化―を重点施策に掲げています。19年5月に戦略推進タスクフォース(TF)を設置し、中期経営計画の具体化・加速化を部門横断的に取り組んできました。19年度には1年前倒しで財務目標を達成、20年度もクリアできる見通しです。

 昨年には期間限定のTFに代わり、部門の枠を超えた戦略推進室を立ち上げました。TFでの検討内容を実行しながら、同室を旗振り役に強靭な企業体質の構築につながる施策を立案し、20年度経常利益90億円以上、25年度同120億円以上といった目標達成に努めていきます。

志賀 ガス供給やESP(エネルギーサービスプロバイダー)事業も含め、現在の競争環境をどう見ていますか。

本永 沖縄エリアでも競争は確実に進展しています。ガス供給事業やESP事業でもそれぞれ激しい競争が続く見込みですが、異業種との提携や、エネルギーの効果的な使い方の提案といった価格以外のアプローチも含め、電気、ガス、ESPとさまざまな提案ができるグループの強みを最大限生かし、提案力や総合力で立ち向かっていきます。

志賀 具体的にはどのような戦略で臨みますか。

本永 自由化以降、オール電化向けメニューのリニューアルをはじめ、ライフスタイルに応じた多様な電気料金メニューを拡充しています。オール電化住宅は20年末時点で累計約4万6000戸、普及率は6%で、さまざまなツールを駆使して普及促進を図っており、昨年2月にサービスを開始したイニシャルコストなしで電化機器が導入できる「りっか電化リース」もその一つとなります。また、先述のPV−TPO事業「かりーるーふ」とオール電化を組み合わせることにより、新たな電化提案もできると考えています。

 さらに、お客さまとのつながりを深め、当社を選んでいただくことを目的に昨年開設した会員サイト「おきでんmore−E」では、ポイントや見える化などの付加価値サービスを提供しており、21年2月末時点での会員数は約2万1000人で、将来的には10万人を目指します。

志賀 ガスの販売状況はいかがですか。

本永 子会社のプログレッシブエナジーを介し、他事業者への卸供給は20年末時点で11件、当社グループによる小売り供給は12件となっています。県中央部では今後、基地跡地開発などで天然ガス需要の拡大が期待されます。そこで吉の浦火力から宜野湾市の西普天間地域を通り、浦添市の当社本店近傍まで約14㎞にわたるガス導管を整備します。23年夏ごろの供用開始を予定しており、導管の整備によって、お客さまのサテライト設備への投資が不要となり、周辺の商業施設やホテルなど大型施設への供給も可能となります。中小規模のお客さまも含め、県中央部においてクリーンで価格安定性に優れた天然ガスを普及するための環境が整います。将来的には導管の延伸も検討していきます。

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