【沖縄電力 本永社長】CO2実質ゼロ化へ着々と布石打ち 高いハードルに挑戦

2021年4月1日

志賀 ESP事業のさらなる展開にもつながりますね。

本永 ESPは東京都市サービスと大阪ガスが出資するリライアンスエナジー沖縄(REO)を主体に、エネルギー設備の設計・施工、設備保有、運転・保守、24時間監視、緊急時対応まで、省エネ、省コスト化をトータルでサポート。沖縄のエネルギー環境の付加価値をさらに高めることを目指しています。沖縄科学技術大学大学院の研究棟増設や、友愛医療センター、複数のショッピングモールでサービスを提供しています。

 現在、本店敷地内に近隣の複数の建物に対して面的に電力と空調用冷熱を供給するエネルギーセンターを建設しています。同センターは面的供給の第1号案件であり、同じく建設中の本店新社屋およびゆがふホールディングスの複合ビルが供給対象となります。高効率・省エネ・環境負荷低減・BCP(事業継続計画)強化といった付加価値を地域社会に水平展開するべく、公民が連携して公共サービスの提供を行うPPP/PFIの活用にも積極的に取り組んでいきます。こうしたニーズはさらに高まると見込んでいます。

エネルギーセンター(右)と供給先の新本店(央)、ゆがふBizタワーの完成予想図

志賀 DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みは進んでいますか。

本永 20年7月に私をトップとし、複数部門のメンバーによる「DX推進事務局」を設置。人財とデジタル技術などを活用したビジネス刷新を「おきでんDX」と定義し、その方針として社内の業務効率化(Convert)、既存ビジネスのデジタル化(Optimize)を通してトップライン拡大(Make)につなげる「おきでん.COM」というコンセプトを掲げました。既にテレワーク推進や社内決裁電子化、ヘルスケア事業検討などのプロジェクトを立ち上げ、こうした取り組みがステークホルダーへの新たな価値の創出にもつながると考えています。

一層の災害リスク軽減へ 離島の燃料転換も模索

志賀 経営課題に果敢に立ち向かい新たな取り組みを展開する一方、電力事業の大本はやはり安定供給の強化です。

本永 20年度は石垣島地方に襲来した台風4号をはじめ、3個の台風被害を受けました。台風の襲来が予想される離島への事前の要員派遣、および被害に応じた事後派遣など、関係機関との連携も強化しています。さらにスマートデバイスを活用し、被害状況や復旧などの情報の迅速な集約を図っています。こうした取り組みを加速させ、引き続き自然災害リスクの軽減に力を入れていきます。

志賀 離島の需給対策で新たな展開はありますか。

本永 どんなに小さく遠い島でも人が暮らしている以上、責任を持って電気を供給するのがわれわれの使命です。離島における電力の安定供給に資する海底ケーブルの整備にも着実に取り組んでいます。21年度には伊是名〜伊平屋、白浜〜内離〜舟浮、石垣〜竹富〜小浜〜西表での取り替え工事を予定しています。

 また、ディーゼル発電機の燃料を重油からLNGに転換できないか検討しています。宮古島ではガスと重油を切り替えられるデュアルフューエルエンジン(DF、1万2000kW×2機)の導入を進めています。

志賀 カーボンニュートラルを見据え、制約が多い離島でもそうした足元の取り組みを着実に進めていくことが重要ですね。本日はありがとうございました。

対談を終えて:沖縄電力が昨年末、電力他社に先駆けてカーボンニュートラルに向けた具体的なビジョンを発表したことは、大きな注目を集めた。2030年に向けては足元の取り組みを着実に進めつつ、50年に向けては多種多様な新技術導入を前向きに検討する方針だ。脱炭素化以外でも、県内での競争が激化する中で総合エネルギー事業者としての地位を固めようと、さまざまな新規事業にチャレンジしている。電源構成や系統面での制約がありながらも掲げた果敢な経営戦略の行方に期待したい。(本誌・志賀正利)

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