【特集2】事故から10年の現場を取材 廃炉目指し着実に前進

2021年4月3日

2月中旬、震災から10年という節目を迎えた福島第一原子力発電所を取材した。
廃炉に向け着実に前進する部分は多いものの、それ以上に積み重なる課題は多い。

入退域施設からサイト内を眺めた風景。タンク群の奥に3・4号機建屋が見える

全線運転を再開した常磐線が運転を取りやめるほどの強風に見舞われた2月中旬。震災から10年を迎えた福島第一原子力発電所(1F)のプレスツアーが行われた。

取材は新型コロナウイルス対策のため参加者は5人以下に絞られ、マスク・消毒は当然のことながら、記者にも事前にPCR検査を義務付けるなど厳格なコロナ対策がとられていた。

集合場所の富岡駅から福島第一原子力発電所までは、バスで20分弱の行程。揺れる車中からふと窓外に目をやると、国道6号沿いに設けられた大型チェーン店が。震災当時そのままに打ち捨てられた状態で、目にする看板も2011年当時のまま。白く薄れた携帯電話会社の旧ロゴマークが、10年という月日を表していた。

国道は通行可能だが、許可証が無ければ進めないエリアも未だ多い

整備進む1F構内 汚染水対策で大きな進展

入退域管理施設で入構手続きを終え、ブリーフィングの後、1F視察が始まった。当日は①1~4号機建屋を見渡す高台、②海側設備、③2~4号機付近、④G1タンクエリア、⑤北側廃棄物関連施設造成地、⑥多核種除去設備等(ALPS)サンプル水の見学―という順路で構内を回った。

取材日は祝日だったが、多くの作業員が行き交っていた。「これでも少ない方ですよ」。東京電力担当者が言う。当日は2000人弱が作業していたが、通常は4000人程度の人が詰めているのだから驚きだ。

バスに乗り元開閉所建屋の脇を通ると、1〜4号機を望む高台に到着。1号機では排気塔解体工事を終え、2号機、3号機では使用済み燃料棒の取り出し作業が進んでいる。政府策定の廃炉の中長期ロードマップでは、事故後10年以内に1~3号機いずれかで燃料デブリ取り出しを開始するのが目標。今年はその最終年を迎えている。

1号機建屋と切断した1・2号機排気塔

2号機建屋と3号機建屋

下から見た4号機建屋

海側エリアでは1~4号機で発生する汚染水が流出しないよう遮水壁工事が行われ、18年に完了。汚染水の発生量は凍土壁の構築で、目標に据えていた日量150㎥以下まで減少している。

また海側エリア全体では津波対策でかさ上げ工事や護岸工事が行われていたため、毎年取材している記者からも「この数年で特に印象が変わった」との声が聞こえた。

それだけ工事が進捗していることもあり、東電社員や現場作業員の中には震災直後の荒れ果てた構内を見たことがない人も少なくない。震災の教訓として、サイト内には震災時に被害があった設備の一部を残しているそうだ。津波で押し流された大型クレーンも当時のまま保存されている。

津波で押し流された大型クレーン

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