再エネ連系拡大で脱炭素社会に貢献 公益性を追求し社会の期待に応える

2021年5月4日

【送配電網協議会】

ひらいわ・よしろう 1984年東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻修了、中部電力入社。
専務執行役員、取締役専務執行役員、取締役副社長執行役員などを経て2021年4月1日から現職。

全国の一般送配電事業者による「送配電網協議会」が4月1日、電気事業連合会から独立し発足した。

理事・事務局長に就任した平岩芳朗氏に、新組織が果たす役割や解決すべき課題について聞いた。

―送配電網協議会の役割は。

平岩 昨年10月に電気事業連合会の中に一般送配電事業者10社で構成する送配電網協議会を設置し、4月1日に新たな団体としての活動を始めました。系統運用の中立性、透明性の確保はもちろん、低廉で安定的に電力を供給するという送配電事業者の使命を、これまでと変わらず果たすことが第一の役割だと考えています。

 その上で、再生可能エネルギーの連系拡大を通じた脱炭素社会への貢献、災害に強いネットワークの形成など、さらなる公益性を追求することで、社会からの新たな期待にも応えていかなければなりません。

―今冬の電力危機を送配電網協議会としてどう振り返りますか。

平岩 全国のお客さまに電気の効率的な使用にご協力いただき、また、発電事業者、自家発事業者には供給力の積み増しの要請に対応いただいたことにより、今回の危機を乗り切れたことを大変感謝しています。電力広域的運営推進機関において、今回の需給ひっ迫を受けて短期・長期でどのような対応が必要か検討しており、当協議会も実務者として参加しています。

 今回の危機は、LNGの供給支障などさまざまな要因が複合的に重なったことによるkW時不足によって引き起こされたということが、これまでのkW不足との大きな違いです。何日後にどの程度のkW時が不足するのかを評価する仕組みがなく、こうした状況下での全国的な応援融通のルールもありませんでした。こうした状況に対処するためにどのような施策を講じるべきか、協議会としても検討の場で提案していきます。

需給調整市場を開設 参加者拡大へ広報に注力

―具体的にどのような施策を提案していきますか。

平岩 需給ひっ迫時には、最終的な周波数調整を含めた安定供給を担う上で調整力の確保が非常に重要です。送配電事業者がそうしたミッションを果たすためには、厳しい気象条件の中でも調整力を確実に確保するための仕組みやルールが必要であり、そのような提案をしていきたいと考えています。

―4月1日には新たに需給調整市場が開設されました。

平岩 再エネ予測誤差を補正するための「三次調整力②」の取り引きが始まりました。各送配電事業者のエリアごとに必要量を募集し、原則全国大でメリットオーダーによる調整力の調達を行います。これにより調達コスト削減効果があると期待しています。具体的には、1カ月ごとの確報値が積み上がった段階で評価することになります。

 今後、より応動速度の速い商品の取り引きが段階的に始まりますが、まずはスタートしたばかりのこの商品をしっかりと運用し、調整力を調達する送配電事業者のみではなく、供出する側の発電事業者にとっても適切に取り引きできる環境を整える必要があります。

 そのためにも、各送配電事業者と発電事業者とのコミュニケーションを深めるとともに、市場の仕組みをより理解していただくための広報活動にも力を入れていきます。

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