脱炭素目指す「一丁目一番地」技術ヒートポンプを最大活用へ

2021年6月5日

松本 課題は運用コストですか。

町田 イニシャル費と運用費ですね。この社屋で設備見学の機会を設けることがあり、アンモニア冷媒を使った空調の仕組みに皆さんから関心を持たれるのですが、コスト増をためらってしまい見学だけで終わることが多く、実際に空調用途として導入されるケースはまだまだ少ないのが現状です。

松本 アンモニア冷媒の歴史は古いのですか。

町田 歴史は古く、私どもとして大きな実績となったのが、旧ソビエト連邦時代に、当時の年間生産台数の3倍に及ぶアンモニアレシプロ型圧縮機を156台導入したことがありました。1960年のことです。その後、冷媒技術の変遷があり、フロンを使ったR22という冷媒が世の中を席巻しました。しかし、90年代になってオゾン層破壊が懸念され、使用が禁止されました。その後、代替フロンとなる冷媒も登場しましたが、松本先生がおっしゃる通り、2000年代に入ってからは地球温暖化対策が叫ばれ始め、その観点から昨今では、代替フロン利用の規制が厳しくなっているのが現状です。

松本 カーボンニュートラルの流れで、発電用燃料としてだけではなく、環境に優しい冷媒としてのアンモニアも注目されそうです。

町田 圧倒的な市場規模の空調向けの導入はまだまだですが、ニッチな市場である産業冷凍向けは比較的進んでいます。先ほどの旧ソ連向けも冷凍用途です。冷凍漁船などの船舶が着く港湾エリアの冷凍冷蔵設備では、当社の設備が比較的利用されています。

 国からは自然冷媒の冷凍装置を普及する目的で補助金が出ています。当社では手掛けていませんが、コンビニ向けといった規模の小さな冷凍ショーケースの導入などにも補助金が出ていますね。こちらの規模ではCO2冷媒のショーケースが市場に出ています。

 冷凍冷蔵分野では、いずれ残存している旧式のフロン冷媒からアンモニアなどの自然冷媒式へと置き換わっていくかと思います。

松本 今後の課題は、市場規模の大きい空調分野に導入が進められるか、どうかですね。

町田 はい。われわれも、国から、冷凍冷蔵向けだけではなく、安全でコストの安い、自然冷媒を使った空調分野の設備開発を求められていますが、その際、どうしても感じざるを得ないことがあります。

松本 どういうことですか。

町田 エネルギー政策における海外と日本の差です。

出口戦略示す欧州 国主導のエネルギー政策

松本 詳しく教えてください。

町田 海外との比較の話をする前に、少し当社の海外展開について話しますと、私が85年に入社した当時から既に多くの海外の拠点がありまして、現在では100カ所以上の拠点を設けています。

2008年に建て替えた本社ビル

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