【特集2】全国で進むネットワーク強靭化 実現の陰にある知恵と工夫

2021年6月3日

ネットワーク網のループ化対策は、都市ガス業界でも進んでいる。

関東全域に導管網を張り巡らせている東京ガスは、東京湾外に初めて建設した茨城県・日立LNG基地の2号タンクを建設。さらに日立LNG基地と鹿島臨海工業地帯をつなぐ92.6㎞の茨城幹線も整備した。これにより、東京・神奈川・千葉・埼玉をつなぐ小ループと、千葉・茨城・栃木・群馬をつなぐ大ループが完成。計1000㎞に及ぶ導管網と東京湾・太平洋に面したLNG基地が整備されることで、一大ガスネットワークが完成した。

西部ガスも北九州市若松区と福岡県新宮町を結ぶ九州北部幹線の整備を行い、大需要地間の複線化を実現。総額200億円もの一大事業は数多くの困難に見舞われたものの、創意工夫を重ねたことで無事に工事を完遂した。

また大阪ガスも地域のレジリエンス(強靭化)能力を向上させるべく、20年4月から兵庫県尼崎市と京都府久御山町間を接続する、全長47.4㎞の尼崎・久御山ライン整備に着手している。住宅地を通る工事ということもあり、電気・通信用の共同溝や、地下にトンネルを掘るシールド工法が中心の工事となった。

工事の陰には現場の工夫 高い志で安心・安全を実現

需要家の安全・安心を守るネットワーク整備は、現場社員の地道な仕事の上に成り立っている。導管や送電網を敷設するためには、道路管理者や自治体との折衝、用地買収のために地権者と交渉することが必要だ。さらに工事前には周辺住民の理解も不可欠で、丁寧な説明も求められる。これらは時間のかかる作業だが、工期や予算、人員リソースに限りがある。

安定供給を1日でも早く実現するためには工期の順守は絶対で、施工中に襲いかかる災害にも対応しなければならない。工期短縮や少しでもコストを引き下げるために、クラウドシステムの採用や、省力化に向けてロボットやドローンなど、時々の最新ソリューションを導入。そして昨年からは新型コロナウイルスへの感染対策も求められるなど、現場の苦労は尽きることがない。

快適な生活は、現場が重ねた試行錯誤と、災害にも負けないエネルギーインフラ網を構築するという、エネルギー事業者の強い使命感で達成されていることを心に刻みたい。

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