【東北電力 樋口社長】「スマート社会実現事業」を成長事業と位置付け早期の収益化を目指す

2021年8月1日

「スマート社会実現事業」の推進に向け、その中核を担う「東北電力フロンティア」を設立。デジタル技術やイノベーションを通じて、地域の方々の未来の暮らしを支える。

              ひぐち・こうじろう
              1981年東北大学工学部卒、東北電力入社。
              18年取締役常務執行役員発電・販売カンパニー長代理、
              原子力本部副部長、19年取締役副社長副社長執行役員
              CSR担当などを経て20年4月から現職。

志賀 東日本大震災から10年を迎えました。東北の復興状況についてどう見ていますか。

樋口 震災により、地域はもとより、当社グループとしても甚大な被害を受けた中で、この10年間は被災地域によりそい、ともに歩みながら、電力設備の復旧、その後のレジリエンス強化と電力の安定供給、そして地域の復興に向けて懸命に取り組んできました。

 一方、震災10年を機に、岩手、宮城、福島県と、震災を伝える被災各地の「伝承館」を訪れましたが、道路や鉄道などのインフラを中心に一定の進捗は見られるものの、被害を受けた産業や生業の再生が、業種によっては思うように進んでいないという印象を強く持ちました。

 特に福島県双葉町の帰還困難区域については、当時の様子がそのまま残されています。いまだに避難生活を送られている方々、困難な状況を克服するために懸命に努力されている方々が大勢おられることを踏まえると、復興は道半ばと言わざるを得ません。当社としてもそうした状況であることを念頭に、これからも被災地に寄り添う経営を心掛けていきます。

志賀 政府が2050年カーボンニュートラルを掲げています。どう達成していく考えでしょうか。

樋口 技術的なブレイクスルーやイノベーションが不可欠である、極めてチャレンジングな目標であると認識しています。達成には国を挙げて技術開発に取り組む必要がありますが、積極的に挑戦することは、企業価値の向上につながりますので、当社の経営にとっても重要な課題と捉えています。

 3月には、長期的な方向性として「東北電力グループ“カーボンニュートラルチャレンジ2050”」を取りまとめました。「S+3E」の確保を大前提に、再生可能エネルギーと原子力発電の最大限の活用や火力電源の脱炭素化に加え、電化の推進や分散型エネルギーの活用とエネルギー利用の効率化によるスマート社会実現に取り組むなど、供給と需要の両面から取り組みを推進していくことで、カーボンニュートラルに挑戦していきます。

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