【東北電力 樋口社長】「スマート社会実現事業」を成長事業と位置付け早期の収益化を目指す

2021年8月1日

志賀 再稼働時期の見通しは。

樋口 女川2号機は22年度の工事完了を目指し安全対策工事を進めています。工事完了後、準備が整った段階での再稼働を目指しています。再稼働には、工事の完了に加え、使用前事業者検査や長期間停止している設備の点検・確認を入念に行うなど、しっかりと取り組むべき事項があり、これらを着実に進めていかなければなりません。また、停止から10年が経過し、運転の経験がない社員が多数います。現在は、シミュレーターを利用した訓練のみならず、火力発電所や他社の原子力発電所でも研修を実施するなど、人材の育成に力を入れています。

志賀 東通1号機の審査状況はいかがでしょうか。

樋口 東通1号機の新規制基準適合性審査は、現在、地震・津波に係る審査が行われており、昨年7月には、敷地内および敷地周辺の断層の活動性について、「概ね妥当な検討がなされている」と評価されるなど審査は着実に進捗しています。

 地震・津波の審査は当面、基準地震動・基準津波の策定が課題であると認識しています。当社としては、これらの策定に向けて説明を尽くすとともに、先行プラントの審査動向や女川2号機での経験を生かし、審査が効率的に進捗するよう、引き続き適切に対応していきます。

志賀 工事完了はいつごろになりますか。

樋口 東通1号機は21年度の工事完了を目指して、安全対策工事を進めてきましたが、現在の審査や工事の状況を踏まえ、女川2号機の審査実績なども参考に、改めて評価した結果、24年度を目指すことにしました。まずは基準地震動および基準津波の策定、その後のプラント審査などに全力で取り組みます。また、新規制基準への適合にとどまらず、原子力発電所のさらなる安全レベルの向上に向けた取り組みを着実に進めていくとともに、地域の皆さまからのご理解をいただきながら、工事完了後、準備が整った段階での再稼働を目指します。

4月に新会社発足 先進的サービスに挑戦

志賀 4月に新会社「東北電力フロンティア」を設立しました。その役割とは。

樋口 当社は、電気を切り口として、お客さまの豊かさの最大化や社会課題の解決に資する多様なサービスをトータルパッケージで提供していく「スマート社会実現事業」を成長事業と位置付け、ビジネスモデルの転換を図っていこうとしています。早期に収益化するには、次世代のデジタル技術やイノベーションの活用などを通じて、最適な機器制御による省エネ、創エネ、畜エネなどのエネルギーマネジメントをベースとしながら、お客さまの快適・安全・安心な暮らしにつながる各種サービスを取り揃え、これらを組み合わせて提供していくことが不可欠です。

 新会社は、こうした事業・サービスを戦略的かつ機動的に立ち上げるとともに、多様なサービスを迅速かつ柔軟に意思決定し提供していくための事業主体として設立しました。具体的には、デジタルマーケティングを展開して顧客ニーズを把握・分析し、新たなサービス開発につなげていくことに加え、さまざまなパートナーと連携し、「電気」と「サービス」の組み合わせによる、定額制を基本としたパッケージサービスとして提供していくことを考えています。

 今後は東北電力フロンティアを中核に据え、お客さまや地域によりそいながら、グループ社員の総力を挙げてスマート社会実現事業の推進に取り組み、新たな領域にチャレンジし、電力の安定供給とともに先進的なサービスを東北6県および新潟県のお客さまにお届けしていきます。また、人口減少や公共交通機関の不足など、今後、ますます顕在化していく社会課題の解決も同時に実現し、地域の方々の未来の暮らしを支えていきます。

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