【TOKAIHD 鴇田社長】HD制成功の10年を振り返る 築いた基盤でさらなる飛躍目指す

2021年11月11日

【TOKAIホールディングス/鴇田勝彦 社長】

ときた・かつひこ 1968年東京大学法学部卒、通商産業省(現経済産業省)入省。京都府副知事、防衛庁装備局長、中小企業庁長官、石油公団理事などを歴任。2002年TOKAI顧問、副社長を経て、05年社長に就任。11年から現職。グループ会社の社長・会長を兼任す

TOKAIグループはTOKAIホールディングスを設立して今年で10周年を迎えた。

TLC構想によって築いた経営基盤にDXなど新たな要素を融合させて成長を描く。

 ――コロナ禍でありがなら、4期連続増収、3期連続最高益更新、顧客基盤も拡大するなど好調です。主な要因をお聞かせください。

鴇田 当社グループの収益構造は、リテール向けのサブスク事業が売上高・営業利益ともに約6割を占めており、310万件の継続取引顧客を有することが安定収益の原動力となっています。また、ガスを中心としたエネルギー事業のみならず、情報通信やCATV、アクアなど多岐にわたる事業を行っている点も、他社にない優位性であると言えます。

 これらの事業において、エリア拡大やM&A(合併・買収)などにグループ一体となって積極的に取り組み、事業基盤の拡大を進めたことが好業績につながっているものと捉えています。M&Aについて言えば、2017~20年度の前中期経営計画「Innovation Plan 2020 “JUMP“」で成長戦略の大きな柱に掲げ、4年間で15案件(CATV4件、都市ガス4件、建築設備不動産4件、情報通信2件、海外1件)のM&Aやアライアンスを成立させました。これにより、顧客件数35万件、売上高120億円、営業利益9億4000万円(のれん償却前)が増加し、顧客基盤ならびに収益基盤の拡大が図られました。今後も、引き続き推進していきます。

中期経営計画「Innovation Plan 2024」の位置付け

HD制10年で経営改善 一体となって進めたTLC

―ホールディングス(HD)を設立して10周年を迎えました。振り返ってどのような点に注力し、成果を上げてきたのでしょうか。

鴇田 HD体制以前は、グループ各社がおのおのに資金調達や運用を行っていたため、有利子負債残高は1240億円に膨れ上がり、自己資本比率は7・7%と脆弱な財務状況にありました。これを改善すべく、CMS(キャッシュマネジメントシステム)を導入し、グループの資金を一元的に管理することに努めました。その結果、低金利での資金調達が可能になり、余剰資金の削減も図られ、直近の21年3月期末では、有利子負債残高は11年3月期比66%減の421億円まで削減し、自己資本比率は同33・9ポイント増の41・6%に向上しました。HD化による大きな成果の一つと言えます。

 事業面で言えば、HD体制以前は、各社各事業が一定の成長を見せていましたが、ばらばらに事業を行っていたため、非常にもったいないと感じていました。一つの体系を作ってこれらのサービスを束ねれば、攻めにも守りにも、より大きな効果を発揮するのではないかと考え、打ち立てたのが「TLC(トータルライフコンシェルジュ)構想」です。

 当初は、グループ各社共通のデータベースがなかったので、12年8月に「TLCブック」というシステムを構築し、グループ顧客の名寄せを行えるようにしました。また、同年12月より、グループ「TLC会員制度」をスタートしました。その狙いは、お客さまに、当社グループのサービスを一つのみならず、複数ご利用いただくよう働きかけるものであり、利用されるサービスの数に応じてポイントを上積みする仕組みとしました。その結果、現在、会員数は98万件まで増加し、狙いとしていた複数取引率は20%にまで達しています。特に数字が高いのは、静岡県内の都市ガス事業で、その割合は59・7%となっています(静岡県内のCATV事業の複数化率は83・5%で、その多くは放送・通信のセット顧客)。

静岡から世界へ 目指すは五大陸進出

――現中期経営計画「Innovation Plan 2024」で掲げた「LNG戦略の推進」「TLCの進化」について聞かせてください。

鴇田 LNG戦略では、静岡&関東圏(Local)→日本全国(National)→世界(Global)へと事業エリアを着実に広げることを目指します。当社の事業拡大は大きく分けて、M&Aによって基盤拡大するものと、既存事業のエリアを拡大する手法があると考えています。M&Aは、この4年間で多くの情報網やノウハウを得ることができたので、活用してさらに推進していきます。分野としては、重点的に進めてきた都市ガス、CATV、建築設備不動産、情報通信に加え、グループの中核事業であるLPガスも積極的に実行していく考えです。これらによって進出した地域でTLCを普及させ、顧客数を2~3倍に増加させていくことが当社グループの戦略です。

 海外事業では、現在4カ国に進出しています。今後は東南アジアでエネルギー事業を本格化することや、情報通信事業でクラウドビジネス需要の増加が見込まれるアジア地域に進出することなどを視野に入れています。アジアにとどまらず、私の夢である五大陸(ユーラシア、南北アメリカ、アフリカ、オーストラリア)への進出を早期に実現したいと考えています。

事業エリアを広げていくLNG戦略

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