【特集2】北国ならではの省エネ対策 快適な暮らしとの両立を実現

2022年2月3日

【北海道ガス/LOOOP】

北国では冬場を快適に過ごすためエネルギー需要増大が避けて通れない。北海道ガスは独自の取り組みで、省エネと快適性の両立を実現した。

毎年冬になると、気になるのが暖房で増えるエネルギー消費だ。特に、北海道では1年の半分以上を暖房のスイッチを入れて過ごすため、1世帯当たりの暖房のエネルギー消費量は全国平均の3倍に達する。

北海道ガスでは、こうしたエネルギー消費の削減を課題に位置付け、省エネの推進と快適な暮らしを両立する取り組みを2016年から開始した。その一つがガスと電気の両方を扱えるホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)「EMINEL」の開発だ。

EMINELのシステム概要図

同システムで目指したのは、主に①IoTと行動科学を活用した省エネサービスの展開、②双方向のコミュニケーションによる顧客との関係強化、③ビッグデータを活用し、ニーズを的確に把握した新たなサービス展開やIoTによる事業効率化―の3点だ。

開発において、「環境省実証事業」として15~17年の3年間にわたり、札幌市内の顧客100件に自社開発のHEMSを設置して省エネ実証試験を実施した。エネルギー利用状況と詳細な住環境情報の分析を通じて、暖房熱源機の自動制御やお客さまの行動変容(省エネ行動の誘発)に関する技術開発や実証を行った。

北海道の多くの世帯では、冬は1日中暖房を入れっぱなしで利用する。これを外出時など、人感センサーで部屋にいないと判断したときには設定温度を下げる自動暖房制御や、アプリの遠隔操作で帰宅時間に合わせて暖房したりするなど省エネを図った。スマートエネルギー推進室の中村充室長は「北海道の暖房向けエネルギーの省エネの余地は大きい。実証では、7.6%の省エネ効果を得ることができました」と語る。

実証を経て、EMINELは18年10月、商用版のサービス運用を開始した。前述の自動暖房制御や省エネアドバイスを活用することで、快適性を維持したまま、省エネを実現。灯油セントラルより年間約16%、エコジョーズ単体より約5%のコスト削減を図ることが可能だ。

ナッジで自主的に行動 最大2.8%の省エネ効果

北ガスのもう一つの取り組みが環境省のナッジ実証への参画だ。「そっと後押しする」ことを意味するナッジの実証はエネルギーCO2削減を目的に、全国のエネルギー5社が30万世帯に省エネレポートを郵送する大規模事業として、17年から4年間実施された。実証の1~3年目はモニターとなる顧客に用紙1枚にまとめた省エネレポートを送付。各世帯のエネルギーデータとともに、属性が類似するほかの世帯のデータを掲載して比較検討できるようにした。

「単に省エネアドバイスを送るだけでなく、ほかのお客さまのデータを参照できるようにすることで、それが気付きとなり、お客さまが自主的に省エネについて考えて行動を起こすようになりました」と中村室長は実証を振り返る。

3年間を通して、北ガスが顧客に郵送したレポートが閲覧された割合は全体の約80%前後、レポートを見て実際に省エネ行動を起こしたのは約25%前後と多くの世帯で反応があった。これにより、月間最大2.8%の省エネ効果を得ることができた。最後の4年目はレポートをあえて送付せず、省エネ効果の持続性を検証。この期間も年間2%の省エネ効果が得られた。北ガスが実証した6万世帯での合計CO2削減量は6939tに上る。

北ガスでは、EMINELの通信機能を生かし、デマンドレスポンス(DR)の実施も計画中。中村室長は「DRに協力してくれたお客さまにはポイントで還元するなどを検討しています。世帯単位の最適にとどまらず、エネルギーネットワーク全体から見て電気が足りないとき、家庭用コージェネ『コレモ』を導入するお客さまに発電してもらうといった最適化も目指していきます」と展望する。

今後もさまざまなコミュニケーションツールに対応させ、顧客とともに省エネによる低炭素・脱炭素化に取り組む構えだ。

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