敦賀総合研修センターが開設10周年 原子力安全と人材育成の充実を図る

2022年4月8日

【日本原子力発電】

地元をはじめ国内の技術者や学生、海外からの研修生などが利用する敦賀総合研修センター。

原子力発電専業会社ならではの机上と実地を組み合わせた体系的で多彩な研修コースを設置している。

国の第六次エネルギー基本計画では、2030年におけるエネルギー需給見通しの原子力割合は20~22%と示されている。一方、現在、新規制基準に適合し、再稼働した原子炉は10基、19年度の電源構成では6%にとどまる。プラント運転経験のない者にどう技術を習得させるかが喫緊の課題だ。そうした中、今年の10月で10周年を迎えるという福井県敦賀市にある日本原子力発電(日本原電)敦賀総合研修センターを訪れた。

日本原電は、1968年に茨城県の東海村で研修業務を開始して以降、50年以上にわたる原子力安全と人材育成の経験および実績を持っている。

12年10月に開設された敦賀総合研修センターは、原子力安全の観点から人材育成のさらなる充実を図るため、社員研修はもとより、地元をはじめとする国内の技術者や学生、また海外からの研修生などを対象とした体系的な研修を実施する施設となっている。

同センター教務グループの和佐尚浩グループマネージャーより研修センターの特徴と取り組みについて説明を受けた本誌が、順を追って紹介する。

運転現場を模擬した設備 リアルな訓練に取り組む

まず、同センターの主要施設は、運転訓練設備、保修訓練設備、安全体感設備に大別される。

「運転訓練設備」では、敦賀発電所2号機運転員専用の中央制御室操作訓練施設「フルスコープシミュレータ」がある。ここでは、東日本大震災で経験した全交流電源喪失の他あらゆる事故時の訓練が繰り返し行われている。特徴的なのは、フルスコープシミュレータと別に現場盤室があり、中央制御室外の発電所現場にある操作盤や現場弁の操作がシミュレーションできる。中央制御室運転員と現場運転員が連携して訓練するもので、実際に現場操作盤や操作弁が現場のどこにあるかを理解していないと操作できない。さらに、現場機器が起動した際の様子を記録した動画で機器の運転音を確認するなど、原子力発電の運転経験の少ない運転員には有効な訓練である。

敦賀発電所2号機(PWR=加圧水型原子炉)と東海第二発電所(BWR=沸騰水型原子炉)の異なる原子炉を有する日本原電には、双方の解析データを使用し、原子力プラントの挙動を模擬することが可能な「教育シミュレータ」がある。これは、原子力発電の系統が俯瞰的に「見える化」された、日本原電のオリジナルだ。

全交流電源喪失を想定したフルスコープシミュレータ訓練

「保修訓練設備」では、机上では学べない現物による機器の構造や原理について実習を通して学ぶ。ポンプ、弁、水タンク、熱交換器、支持構造物、計測機器などにより構成されるループ設備は、発電所実機と同様の設備・機器で構成され、実動するポンプやモーター、バルブなどによりダイナミックな流体の流れを再現できる。保修員は、ループ設備を有効活用して機器の分解点検や機器の運転状態監視測定のスキルや勘所を学ぶ。

ループ設備は、保修員に限らず、運転員の現場での異常早期発見能力を向上させる訓練にも利用されている。ループ設備を現場に見立て、あらかじめ設備に仕掛けたトラップを運転員巡視で探させ、また、異常発見時の対処方法についても考えさせるという運転経験者の提案による自主訓練である。水と蒸気(熱)の挙動(水の流動・沸騰・相流・伝熱など)、ポンプ性能、キャビテーションを理解するための実習装置は、現象が視認できるため理解しやすく、若手社員や学生の基礎実習に有効である。

電気・計測制御設備を学ぶために、高圧・低圧開閉装置、電動機、電動弁、無停電電源装置、訓練用シーケンサー装置、炉外核計装盤、放射線監視盤などが備えられており、基礎的な知識の習得、実務訓練からトラブル対応の訓練が行われる。

原子力発電の専業会社である日本原電は、東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故を教訓に、社員およびグループ会社社員が避難された方々の放射線測定をできるように、放射線管理の実習としてスクリーニング研修にも力を入れている。この研修は、日本原電が「社員の多能工化」を図るために企画し、社員の専門外技量付与となっている。

ループ設備で異常早期発見訓練を行う運転員

「安全体感設備」では、高所・玉掛け・火気作業や電気工事などに潜む危険性を、安全に身をもって体感できる。ここでは、安全帯荷重体感(ぶら下がり)や、衝撃を体で覚える墜落荷重体感、アーク溶断による火花体感など、作業安全に必要な動作や安全のための感度を磨く体験ができるようになっている。これらの研修では、過去に経験したトラブル事例や、ヒヤリハット事例の振り返りも行われ、安全第一の発電所運営に大きく寄与している。

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