敦賀総合研修センターが開設10周年 原子力安全と人材育成の充実を図る

2022年4月8日

現場で経験豊富な講師陣 プラントノウハウを伝承

同センターでは社外者を対象とした公開研修にも取り組んでいる。29のコースは、14の「原子力専門技術」と15の「原子力周辺技術」に分かれており、前者は原子力関連企業に勤める社会人や原子力工学を学ぶ学生に、後者は原子力を学ぶ入社後数年までの若手社員に適している。これらの研修は、座学に加え「教育シミュレータ」を使った原子力発電所のシステム系統や事象確認、保修施設や放射線計測装置などを使った体験などのプログラムが用意されている。他の電力関係会社や電力関係企業の社員向けに、実務的な知識や手法を学ぶコースも開設し、好評を博している。

また、日本原電は、国内初の商業炉廃止措置に取り組んだ経験を生かし、廃止措置に係る研修にも力を注ぐ。福井県嶺南地区には、7基の廃止措置炉が密集する。福井県は、「嶺南Eコースト計画」の一環として地元企業が積極的に廃止措置に参画するよう推進しており、日本原電も一員として賛同し、研修センターにて廃止措置に係る研修に取り組む。

日本原電が取り組む研修は、それだけではない。国内外からの受託研修として関係機関からの委託を受けて、東南アジア諸国やポーランドなど、これから原子力発電所を保有しようとする国々の研修生を対象にしたオーダーメードな海外向け研修プログラムを実施してきた。これまでに海外から18カ国、235名の研修生を受け入れている。

施設内には、国際会議が開催できる最大150名収容可能な教室、食堂を備えた宿泊・厚生施設などもあり、充実した環境が整っており、長期間にわたる研修にも対応している。

これらの「社員研修」「公開研修」「受託研修」は、過去10年間に1924件の研修が実施され、受講者は延べ約1万3000名にも上っている。

教育シミュレータで学ぶ海外の研修生

このほか日本原電では大学からの依頼を受け、PWRとBWRの炉型の違いなどプラントシステムの講義を学生に行っている。また、出前研修として高専や高校の生徒に原子力発電の授業を行い、次世代層の原子力発電への関心を高め、原子力の将来を担う人材の創出にも取り組んでいる。

同センターの一ッ矢範生所長は、「敦賀発電所2号機は、11年5月に運転を停止してもうすぐ11年が経とうとしている。これから敦賀発電所2号機は再稼働を目指していくが、プラント運転経験のある運転員や所員が減少している中、センターの役割は運転員の力量向上はもちろんのこと、所員の人材育成、さらなる技術力向上に取り組むことである。センターには、プラント運転経験のある講師が在籍しているので、様々な研修の中で経験や知識を生かし、プラント運転中のノウハウなど、技術伝承を継続しながら実施していく。敦賀発電所の所員だけではなく、原子力に関連する企業の方や原子力を専攻している学生さんを対象に、プラント設備や放射線管理、廃止措置など将来的に原子力に関わる要員の確保や人材育成に取り組んでいく」と力強く語った。

放射線実習を受講する地元の高校生

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