【四国電力 長井社長】エネルギー情勢混迷の中 リスクマネジメント強化で 電力安定供給を維持する

2022年6月1日

電力ひっ迫対策に全力 伊方原発の運転を維持

志賀 3月22日の東北地方・首都圏での電力需給ひっ迫についてお聞きします。原因をどう分析していますか。

長井 今回の要因としては、まず冬の高需要期終了に伴い、発電所が計画的な停止に入って供給力が低下する中で16日に発生した福島県沖地震の影響により、複数の発電所が計画外で停止したことが挙げられます。その上で、真冬並みの寒さによる電力需要の大幅な増加と、悪天候による太陽光の出力低下などが重なったことにより、電力需給が極めて厳しい状況となったと認識しています。

志賀 四国電力管内で同様の事態になった場合、どのような対策を考えていますか。

長井 当社と四国電力送配電では、そうした事態に陥らないよう、引き続き、四国エリアの電力供給の要である伊方発電所3号機の安全・安定運転を継続することはもとより、電源などのトラブルを未然に防止する観点から、日頃より設備の運用・保守に細心の注意を払うとともに、他エリアとも連携しながら、西日本全体で安定供給の維持に必要な予備力を確保するなど万全の対策を講じていきます。

志賀 各社の予備力の低さを見ると、今後も電力需給ひっ迫が起きる可能性が高いと見ています。

長井 私ども電力会社は、需要に応じた供給力を確保するとともに、電源および流通設備にトラブルが発生しないよう、日ごろから巡視や点検を行うことで、設備の安定運用に努めることが、安定供給を維持するうえで何よりも重要と考えています。寒波・猛暑による急激な需要の増加や、大型電源のトラブル停止といった複合的な要因が重なることにより、厳しい電力需給状況が事前に予想される場合には、発電・小売りと送配電のそれぞれが主体的に需給バランスの維持に努めます。
 具体的には、発電部門では、運転可能な電源を全て稼働させるとともに、揚水発電の最大限の活用ができるよう、事前に上池を満水に維持するほか、定格出力を超える増出力運転なども実施します。小売り部門では、お客さまに節電のお願いをするとともに、自家発電設備を保有しているお客さまへの発電余力の焚き増しの依頼など、発電・小売り一体となって供給力を最大限確保します。
 一方、四国電力送配電では、でんき予報を通じてエリアの厳しい需給状況を発信して節電に向けた注意喚起や発電事業者に出力増加の協力依頼を行うなど、需給バランスの維持に努めます。

企業活動を通して地域の成長と活性化を目指す

志賀 ここ数年、自然災害が多発しています。

長井 台風や地震といった自然災害などにより、長期にわたって需給がひっ迫するような場合は、緊急対策本部を設置して、当社と四国電力送配電が一体となって対応を行います。
 また、こうした対策だけで安定供給に必要な供給力を確保できない場合は、電力広域的運営推進機関が供給力確保のための指示を行います。それでも十分な供給力が確保できない場合、国が需給ひっ迫警報や節電要請を発令することにより、電力会社と連携し、停電という最悪の事態を回避する役割を担っていると認識しています。

志賀 今回の電力危機では、需給ひっ迫警報の遅れなど、旧一般電気事業者が自ら需給を担当していた時代と比べ、問題が発生しているように思います。

長井 国の審議会で検証が行われていますが、委員から「なぜもっと早いタイミングでお知らせできなかったのか。前日の早い段階で知らせていれば、自治体や企業はもう少し早く動けたのではないか」「地震の影響のため、需給ひっ迫が起きていることが事前に分かれば、消費者はもう少し早く動いたのではないか」といった指摘がありました。電力会社は、災害などの発生に備えて、予め不測の事態を想定し、状況に応じて即応していく準備が必要です。加えて、災害時の迅速かつ分かりやすい情報発信の重要性を痛感しています。
 かつては、国全体として供給力に相応の余裕がありましたが、燃料費のかからない太陽光発電の普及拡大などに伴い、卸電力市場の価格が下がり、既設の火力発電所が設備の維持・運転に必要なコストを回収できずに全国各地で休・廃止が進んだ結果、供給余力が大きく減少しています。こうした背景から、地震や悪天候など自然災害へのリスク対応力が落ちているように思います。

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