【電源開発 渡部社長】CO2削減に積極姿勢 国内外有望分野に投資しベストミックスを追求

2020年11月2日

石炭火力のCO2排出量の削減を進める一方、洋上風力など再エネ開発を積極的に行っている。
ESG投資銘柄として高い評価も受けた。
事業環境の不確実性が増す中において、電源のベストミックスを追求している。

わたなべ・としふみ
1977年東大法学部卒、電源開発入社。2002年企画部長、06年取締役、09年常務などを経て、13年副社長、16年6月から現職。

志賀 新型コロナウイルスの出現で新しい社会のあり方が問われています。さらに菅新政権が規制改革を打ち出すなど、例年以上に事業環境が大きく変化しそうですし、地球温暖化対策への注目も引き続き大きい。こうした環境変化をどう捉えていますか。

渡部 電力小売り全面自由化から4年経ち、この間に市場のルールの検討、整備が進められてきました。一方で電力供給のレジリエンス(強靭化)も不可欠であり、非常時の迅速な復旧体制の構築が新たな課題となっています。気候変動問題に関しては、ゼロエミッションへの取り組みを加速する必要があります。

さらに、コロナ禍で電力市場価格に対して下げ圧力が出ており、数年この状態が続く可能性を視野に入れる必要があります。長期的な展望に立てば会社の目指すべき進路は動かさず、辛抱が必要な場面も出てくるでしょう。一方、短期的には変化を捉えて機敏に動くことも求められます。両方の考え方を持ち、どう立ち回るかが問われていると感じています。

IGCC活用に意欲 CCSの検討も視野

志賀 温暖化関連では欧米を中心にESG(環境・社会・ガバナンス)ブームなどが拡大し、原子力や石炭火力を否定しているようにも見えます。日本の世論も欧米の動きに影響されつつあります。

渡部 日本のエネルギー資源は輸入に9割以上依存している事実は動かせません。そんな条件下で日本のエネルギーセキュリティーが成り立っていることを、対外的にもっと主張する必要があります。

一方、国内に目を向ければ、今の若い世代の価値観は多様化しています。起業やベンチャーなどを志向する人も増えてきた一方で、「社会的意義のある仕事をしたい」という人たちも結構な割合で存在します。当社に入社する社員にも、そうしたモチベーションの人が多いと感じています。

志賀 先般、容量市場の初入札結果が公表されました。結果についてさまざまな意見がありますが、市場設計などについてどのようにお考えですか。

渡部 例えばスポットマーケットは十数年分の取引の記録があり、どんな条件で値段がどう動くか、分析し知見が蓄積されています。そして、再エネが拡大したことでプレーヤーも増えてきました。容量市場には期待していますが、まだ入札が始まったところで知見が蓄えられるには時間が必要でしょう。新規投資などの判断には市場が練られていく必要があると思います。

志賀 容量市場が意味のある市場となるのか、見守りたいと思います。一方、梶山弘志経済産業相が言明した非効率石炭火力フェードアウトのインパクトは大きいと思いますが、どう対応されますか。

渡部 経産省の審議会で示された非効率の対象となる当社の設備は、石炭火力全体の設備容量の4割ほどです。一番古い高砂火力は1969年の運転開始から50年を超えています。

非効率石炭火力のフェードアウトを加速するといっても、現在利用率が7割を超える設備を即停止せよ、ということではありませんし、電力需給や雇用の問題もあります。地元の要望も聞き、十分な理解を得ることができるよう、時間をかけて進めていく必要があります。

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