【電源開発 渡部社長】CO2削減に積極姿勢 国内外有望分野に投資しベストミックスを追求

2020年11月2日

志賀 リプレースも進めますか。その場合はUSC(超々臨界圧)かIGCC(石炭ガス化複合発電)か、どう考えますか。

渡部 リプレースするならばIGCCが有望です。USCは今後、環境アセスメントのハードルが高くなるでしょう。ここ数年で新規運開した設備に加え、今後運転開始予定のものもあり、USCの設備容量は既に十分な状態です。当社の設備のリプレースを考える上では、さらにその次の10年でどう活用していくのか、という絵を描き、判断する必要があります。より高効率のものに置き換えていくならば、やはりIGCCが有望です。

大崎クールジェンプロジェクト(NEDO事業)ではCCS技術の確立に向けた実証試験を実施

志賀 CCS(CO2回収・貯留)も組み合わせていきますか。LNGに対して競争力はあるのでしょうか。

渡部 2050年80%削減に向けてはガスも石炭もCCSが必要である中で、当社が研究開発を進めている酸素吹IGCCはCO2をより効率的に回収できるという特徴があります。あとはCO2の貯留コスト次第です。CO2をどこにどの程度貯留できるのかなど、CCSには国の関わりも必要と考えています。自由化市場の中で、CO2排出量削減に必須の技術であるCCSを経済的に成り立たせることが求められます。あわせて、CCU(カーボンリサイクル)の研究の進展にも期待しています。

志賀 一方、金融業界は新規の石炭火力へのファイナンスや保険を引き受けない方針を相次いで発表しています。影響はありますか。

渡部 直接的にはまだ感じていませんが、例えば物損の保険がない発電所はあり得ません。そうならないように石炭火力のCO2排出量削減努力を続けていきますが、もし仮に損害保険会社が石炭関連事業への保険を引き受けないことがスタンダードになれば、石炭火力発電は事業として難しくならざるを得ない。ただ、電力の安定供給を万全にするためには、今後も石炭を一定程度使うことが必要です。酸素吹IGCCの研究開発など、石炭火力のCO2排出量削減を追求する当社の姿勢について、引き続き理解を求めていく必要があります。

洋上風力を加速 ESG投資銘柄で評価

志賀 一方、再エネについては、洋上風力の取り組みに積極的です。プロジェクトの現状は。

渡部 国内の一般海域では、北海道檜山沖、福井県あわら沖、長崎県西海市沖の3地点で調査中です。加えて、国が促進区域に指定した秋田県沖でも、JERAとエクイノールのコンソーシアムに入りました。ほかにも港湾エリアでは福岡県北九州市の響灘で事業調査中です。おおむね着床式で考えています。

志賀 1基の出力は1万kW程度でしょうか。仮に100万kWであれば洋上に風車が100基立つわけですよね。環境への影響などがあるのでは。

渡部 地点が限られ、そこに風車がずらっと並びますから、地元に対しては丁寧な説明を行い、ご理解をいただくことが必要です。

志賀 石炭火力は課題があるとはいえ、再エネに過度にシフトすることが果たして正しいのか、個人的には疑問です。

渡部 日本としてもさることながら、当社自身も、電源のベストミックスを図ることが重要だと考えています。再エネは、主力電源として期待されています。特に風力については、政府は今後10年間で1000万kWの導入という目標を立てています。ある程度再エネを持っておくことは事業会社として必要であり、地点が増えるほどノウハウもたまります。それが国内外での競争力につながることを期待しています。

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