【電源開発 渡部社長】CO2削減に積極姿勢 国内外有望分野に投資しベストミックスを追求

2020年11月2日

当社は石炭火力を引き続き使い続けるべく、CO2の排出量を削減する新しい技術開発を行い、かつ再エネも積極的に拡大していることもあり、ESG投資に関する代表的な指数の構成銘柄として評価されています。

志賀 どんな評価なのでしょうか。

渡部 FTSEラッセル社によるESGの格付けで、当社は5点満点中3・5点でした。統合報告書などの公開資料を基に、当社の取り組みを全体的に評価していただいたと思っています。アナリストや機関投資家からは意外だったという声も聞こえますが、ポジティブに受け止めていただきました。

志賀 もう一つの有力な脱炭素電源である大間の状況は。

渡部 新規制基準適合性審査を早く終えることに尽きます。現在は地震・津波関係の審査で一番重要となる地震動に関わる審査を受けています。

志賀 地球温暖化対策が求められる中、核燃料サイクルの重要度が一層増しています。六ヶ所の再処理工場は審査を通りましたが、プルトニウムの保有量削減は引き続きの課題です。MOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料を100%使用できる大間の意義が評価されるべきですが、菅政権への期待は。
渡部 エネルギーのベストミックス、なかんずく原子力政策を堅持、推進していただくことを期待します。大間はプルトニウム利用政策の中で重要な立ち位置にありますので、ぜひこの方針を堅持していただきたいと思います。

海外再エネに積極進出 社内体制を見直し

志賀 話は変わりますが、海外事業は順調に拡大中ですか。

渡部 英国のトライトン・ノール洋上風力(設備出力:85万7000kW)や米国のガス火力・ジャクソン発電所(設備出力:120万kW)などの建設中の大規模プロジェクトは、コロナ禍でも予定通り建設が進んでいます。

特に再エネは海外案件にも積極的に参画しています。一昨年から出資している英国のトライトン・ノール洋上風力に加え、今年に入り米国のメガソーラー事業2案件にも出資しています。

さらに豪州の再エネ企業・ジェネックスと新株発行を引き受ける契約を締結しました。同社は面白い揚水プロジェクトを保有していて、内陸部の鉱山跡地を利用することで最大落差を220mほど確保しています。現地には再エネが大量に導入されており、「ウォーター・バッテリー」として機能します。この跡地は地質が比較的頑丈なため実現可能性があると見ています。

北海道檜山エリア沖では、洋上風力の風況・地盤に関する調査を進めている

志賀 機会があればぜひ見学したい。海外事業も含めて社内の体制変換を図っていますが、その一環で、火力発電所の運営を子会社のJパワージェネレーションサービスにすべて移管すると発表しました。その狙いは。

渡部 これまでは、当社と子会社が分業を行い、一体的に発電所の運営を行ってきました。しかし、発電所で両社の人間が一緒に働く中で、指揮命令系統を一本化した方がメリットは大きい。火力部門が効率的なやり方を数年かけ検討し、自発的に提案しました。

志賀 また、最近はデジタル化が各社の共通課題かと思いますが、どのような方針を立てていますか。

渡部 昨年4月に「デジタルイノベーション部」という新部署を設立し、デジタル技術という将来の社会変革につながる分野に、高いモチベーションを持って挑戦しています。デジタル技術が普及すると、競争力や持続力の強化という直接的な効果に加えて、全部門で仕事のやり方が変わり、考えるスピードや、ものを考える順番など、大きな変化があるはずです。デジタル技術の活用が、当社の挑戦的な風土にもプラスの効果を生み出していくことを期待しています。

志賀 ところで社内報で渡部社長が「職員を毎日無事に帰す」と強調されており、心を打たれました。

渡部 労働安全が重要であることについて国境はありません。英国で参画している洋上風力のプロジェクト会社であるトライトン・ノール社の合言葉「Start Safe, Act Safe, Home Safe」を参考にしています。同社では毎日この合言葉を見て1日をスタート。そして安全に関する毎日の報告を上層部に上げて、安全度を計数化して改善を図っています。当社も安全に関してさまざま取り組んでいますが、人事労務部で当社が取り組んでいる海外事業での事例を研究する中で、この合言葉に出会いました。

志賀 さらに「3H『初めて、久しぶり、変更』を持ってコロナの困難を乗り越えていこう」とも語っていました。その思いは。

渡部 これは現場から生まれた言葉で、3Hのシチュエーションで一番危険が高まるという意味です。現場で、3Hを合言葉に、安全対策の再認識を徹底していきます。

志賀 社員の命を守ることは、まさに経営の原点ですね。本日はどうもありがとうございました。

対談を終えて石炭火力を多く保有するJパワーがESG銘柄として高い評価を受けていることは、あまり知られていない。CO2排出量削減に向けた次世代技術開発や国内外の再エネ開発など、社のベストミックスを図る努力が好意的に受け止められたことの表れだ。こうした好材料を元に、Jパワーが今後どんなビジョンを具体的に描いていくのか、これからの展開に期待したい。(本誌・志賀正利)

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