【北陸電力 金井社長】新たな価値を創造し 地域社会との共存共栄と課題解決に貢献する

2020年11月2日

地域の産業・生活の発展を支える北陸電力。再エネを含む最適な電源構成で低廉な料金水準を実現するとともに、多様なサービスを積極的に打ち出している。

かない・ゆたか
1977年東大工学部卒、北陸電力入社。2004年原子力部長、07年執行役員原子力部長、10年常務取締役、13年副社長、15年6月から現職。

志賀 新型コロナウイルス禍における電気の安定供給に向け、どのような対策を講じていますか。

金井 電気の安定供給は、当社の使命の一丁目一番地です。安定供給確保に必要な業務運営体制を確保しつつ、電力供給の要となる発電所の中央制御室、ネットワーク部門の中央給電指令所や総合制御所などの交替勤務の職場においては、従業員の立ち入りを必要最小限にとどめたり、交代要員を分散して執務させることでほかの班に所属する従業員同士が接触しないようにしたりと、対策を講じてきました。

一方、ほかの従業員には、通勤時の混雑回避のため時差出勤や在宅勤務を推進、交代勤務者を除き当社の約4割の従業員が在宅勤務に取り組みました。加えて、会議室を執務スペースにするなどし、事務所内でも従業員同士の距離を確保するなど、できる限りの対策を講じています。

志賀 ウィズコロナ時代に合わせた働き方改革が不可欠です。

金井 在宅勤務により、通勤時間を有効利用できることや、より業務に集中できるといったメリットが明確になり、その半面、通信環境のさらなる充実の必要性など課題も見つかりました。通信環境については現在、自宅から安全に社内システムへ接続する環境を構築中です。ウィズコロナ時代において在宅勤務の実践は不可欠であり、業務の在り方を大きく変えるチャンスでもあると認識しています。定着を図りながら、柔軟な働き方や労働生産性向上につなげていきたいと考えています。

北陸エリアの電力需要 産業用中心に減少

志賀 コロナ禍による経済活動の低迷で、電力需要にはどう影響したでしょうか。

金井 北陸地域は産業用需要の比重が高いのですが、当社をはじめとする小売事業者全体の北陸エリアにおける電力需要は、第1四半期(4~6月)の前年同期比5・6%減に対し、7月には9・0%減まで減少幅が拡大しており、地域経済の低迷の長期化を懸念しています。当社の小売り販売電力量だけを見れば、首都圏エリアで新規契約を順調に拡大していることもあり、北陸エリアほど悪くはない状況です。ただ、この先何が起きるか分かりませんので楽観視はしていません。

志賀 経済産業省が進めている非効率石炭火力のフェードアウト政策についてはどう受け止めていますか。

金井 既に第5次エネルギー基本計画でも非効率石炭火力のフェードアウト目標を掲げていましたが、突如として2030年と年限を切り、非効率石炭を「亜臨界圧(Sub-C)」「超臨界圧(SC)」と型式で定義されたことに大変驚きました。例えば当社の敦賀火力1号機は、外形上は「非効率石炭火力」に該当することになりますが、建設時の設計発電効率は42・2%と、当初から超々臨界圧(USC)とそん色ない水準です。その後も高中圧タービンの改造を実施し、21年度にはさらなる効率向上のため低圧タービン改造を予定し、改造後は43%程度まで上昇する見込みです。  電力会社の社会的使命として、CO2削減とともに、低廉で安定的に電力を供給することも重要です。石炭火力は、安定供給と電気料金の低位安定に非常に大きな役割を果たしていますので、効率の高いプラントについては残していただけると確信しています。 本政策の目的はあくまでCO2排出削減であることから、石炭火力単独で検討するのではなく、大きな効果を見込める原子力の再稼働の推進と事業環境の整備についても積極的に取り組まなければなりません。原子力の再稼働には不確実な点が多く、供給力確保に責任を負う立場からは、非効率火力の削減計画策定に当たってこのようなリスクも考慮する必要があると思います。

定期点検時のタービン取り替えによる石炭火力の高効率化も(七尾大田火力2号機)

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