【北陸電力 金井社長】新たな価値を創造し 地域社会との共存共栄と課題解決に貢献する

2020年11月2日

志賀 事業領域の拡大に向けた取り組みはいかがですか。

金井 長期ビジョンにおいて、当社グループの将来のありたい姿の実現に向けた基本戦略の一つとして、「新たな成長事業の開拓」を掲げ取り組んでいます。人口減少、脱炭素化、分散型電源の普及拡大など、エネルギー業界を巡る環境の変化を的確に捉え、「地域の課題解決」、「保有資源と新技術を融合した新たなサービス」「海外電力事業」が、集中的に取り組む分野と考えます。そのために、持ち得る経営資源の最大活用に加え、アライアンスやM&Aなども選択肢として、事業領域の拡大および新領域の創出に取り組み、収益拡大と持続的な成長を目指します。

長期ビジョンの実現に向け、持続的な成長を遂げるための新たな成長事業および電気事業の競争力強化に、30年までの期間累計で2000億円以上の投資を行っていきます。また、継続的に生産性向上に取り組み、グループ全体の総合力を強化することで、30年度までに全従業員の1割以上の人員を成長事業へ戦略配置することを目指します。

志賀 関西電力などと協同で設立した福井都市ガスが事業を開始し、金沢市企業局のガス・発電事業民営化も控えています。

金井 北陸地域では、18年に出資・設立した福井都市ガスが今年の4月から事業運営を開始しました。4月1日には金沢市よりガス事業・発電事業譲渡基本方針が示されたことから、これを踏まえ当社は地域に根差したインフラ事業者として、両事業を譲り受ける新会社への参画に向けて前向きに検討を進めています。金沢市の応札に向け、詳細は現時点ではお話しできませんが、金沢市民や金沢市の企業に貢献できる新会社の設立を目指します。新会社においては、これまでの金沢市に加え、周辺地域も視野に入れたエリア展開も可能ですし、サービス面においても電気とガスのセット販売やオール電化など、お客さまのニーズに合わせた多様な選択肢をご提供できるようになると思います。

富山県と「とやま未来創生でんき」創設で合意した

AI・IoT活用加速 業務の効率化を推進

志賀 AI・IoTの活用などによる新サービスへの取り組みはどうでしょうか。

金井 「保有資源と新技術を融合した新たなサービス」の一つと位置付けており、昨年度は、「スマートメーター用通信システムを活用したIoT用通信回線サービスの実施」などを公表しました。今年度に入ってからは、ドローンやAIを用いたインフラ点検事業を展開する「ジャパン・インフラ・ウェイマーク」へ出資し、業務提携しました。今後、当社設備の点検業務の効率化を推進するとともに、将来的に北陸エリアにおける橋梁・プラントなどのインフラ設備点検事業の展開を目指していきたいと考えています。

10月には、「自動販売機の遠隔検針サービス」を開始しました。当社の検針の知見とIoT技術を融合させ、飲料会社様の労務量削減に寄与できます。

また、火力発電所のトラブルの早期発見方策として、重負荷期前の設備点検による健全性確認の強化や、AIやIoT技術を活用したトラブル早期検知システムの開発を進めています。具体的には、富山火力4号機と七尾大田火力2号機に、膨大な運転データを効率よく収集・活用できるデータベースシステムを整備しました。

さらに、設備トラブルを早期に検知できるAIシステムを、今年度、七尾大田火力2号機と敦賀火力2号機で導入し、その後、七尾大田火力1号機と敦賀火力1号機へ順次展開していく予定です。AIの活用は水力の分野でも進んでいます。AIを使うことでダムへの水の流入量を非常に正確に予測できるようになり、より有効な水の活用が可能になっています。

志賀 頑張っておられる社員に何かメッセージを。

金井 今まで心配はかけましたが、志賀原子力発電所の再稼働も全く先が見えない状況から少し視界が明るくなり経営もだいぶ落ち着いてきました。社員には安心して仕事をするようにと伝えたいですね。

志賀 ありがとうございました。

対談を終えて

社長就任から5年。この間、市場競争の激化や脱炭素化など、同社を取り巻く事業環境は大きく変化してきたが、低廉で安定的に電力を供給することによって北陸経済を支えるという強い信念は変わっていない。七尾大田火力が戦列に復帰し、志賀原発の再稼働に明るい兆しが見え始めるなど、引き続き安心して働ける経営の安定化にも腐心。ますます強いリーダーシップを発揮しようとしている。(本誌/志賀正利)

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