配送・供給体制の整備進む 鍵握るLPガスメーターの技術革新

2020年12月3日

ガスメーターの技術革新や通信インフラの整備が着々と進んでいる。これらの技術による集中監視が広がれば、レジリエンス向上や業務効率化につながる。積極的に新技術を採用し、業務やサービスに生かす取り組みを行う事業者を取材した。

LPガスのレジリエンス力をさらに高めるアイテムがある。ガスメーターだ。メーターの技術進歩と通信インフラの整備によって、LPガス業務が格段に高度化している。メーターの無線機能(LPWAなど)によって、ガス消費データを低コストで取り出す環境が整ってきているからだ。ニチガスをはじめ各社が次世代メーターの運用に着手している。

一方、こうした技術はLPガスの「集中監視」を推し進めていくことにもつながり、結果的にLPガスのレジリエンス力や業務効率化が進むことになる。

政策的にも集中監視の導入比率に応じて、事業者に対して「ゴールド」「シルバー」の認定制度を設けている。これまでは保安の観点から、事業者はすぐに需要家のもとへ駆け付ける必要があったが、こうした制度によって、政策的な事業拠点数の緩和策を打ち出している。とりわけ過疎化で悩む地方では有効な手段として期待されている。

【伊藤忠エネクス】7万7000件を高度化 業務効率化と営業促進目指す

全国に大口需要家を含めて55万件以上の直売件数を抱える伊藤忠エネクス。同社がLPWAの取り組みに着手したのは2018年夏のことだ。グループのモデル事業所として岩手県内の四つの営業拠点でLPガス販売を手掛ける物産石油ホームライフ岩手(20年10月に伊藤忠エネクスホームライフ東北と経営統合)と連携。ここのユーザーに対して、順次、東洋計器製の「IoT-R」を取り付けていった。ホームライフ岩手の戸建てや集合住宅向けの全需要家を対象に、これまで約4000件の設置を進め運用の高度化に向け準備してきた。

実証のための土台は整った 多様な料金メニューを提供

「ようやく本格実証の土台が整ってきました。これから、どう合理化できるのか、理想的なストーリーを見いだしていきたい」。ホームライフ部門担当者は話す。

同社が掲げる実証の内容は主に次の三つが挙げられる。一つは認定保安に伴う拠点の集約化、二つ目は自動検針による物流・配送の合理化の検討、三つ目が新たな顧客サービスの創出や保安の高度化・差別化だ。とりわけ顧客サービスの創出には期待が寄せられる。LPWAによって毎日検針を行い情報の正確性を高めることで、各ガス器具の使用量を把握できる。「お客さまの時間別・機器別の特性を考慮した多様な料金メニューを提供していけたらと思っています。LPガスだけでなく、電気の契約にもつながれば」(同)と期待を寄せている。

20年9月末現在、同社グループでは、各取り扱いメーカーから導入に関するサポートを受け、すでに全国で7万7000台を取り付けている。今後も増やす方針だ。「検針・配送・保安業務の効率化と営業面の充実を目指し、LPWA導入推進に努めたい」(同)。

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