配送・供給体制の整備進む 鍵握るLPガスメーターの技術革新

2020年12月3日

【井澤商店】集中監視率100%を達成 岐阜県販売店の偉業

井澤商店は岐阜県瑞浪市にある600件規模のLPガス販売事業者。1964年からLPガスの販売を開始した。IT化には早い時期から関心があり、91年に業務管理システム、93年に集中監視システム「チェックメイト24」を導入している。2000年には集中監視設置率70%以上を達成し、液化石油ガス法に基づく、ゴールド保安認定事業者となった。 

ただ、ゴールド保安認定事業者になってからは、ADSLや光回線などへの利用者の回線変更、顧客の自然減、固定電話利用者の減少、オール電化への移行などの影響から、事業を維持するのが精一杯という状況が続いた。

そうした中、集中監視用端末の導入を低コストで実現する通信規格LPWAが登場した。そこで、同規格に対応する東洋計器の「IoT-R」を工業用や空き室を除いた顧客全戸となる596件に設置し、昨年9月に国内初となる100%を達成した。NCU(ネットワークコントロールユニット)を用いた従来システムとIoT-Rを併用しての達成となったが、今年4月には全てIoT-Rに切り替えている。

システム導入率を向上 2割のコスト削減を目指す

井澤商店が集中監視率向上に取り組んだ背景には、コスト削減がある。05年頃、当時の岐阜県LPガス協会会長が、「今後、事業者は運営コストを10年かけて2%ずつ下げて、20%削減を目指す必要がある」と発言。しかし、当時それほどの危機感を持つ事業者はほぼ皆無だったという。その発言が現実のものとなって迫ってきたのはここ数年だ。LPガスは全国規模で激しい需要減に見舞われており、事業の効率化は待ったなしの状況となっている。

井澤康樹会長は「集中監視システムの導入率をさらに上げていくべきと考えていたところに、LPWAの登場など、技術向上が重なりました。国内には100%集中監視システムを導入する事業者はいなかったので、どうせやるなら一番乗りを目指そうと進めました」と経緯を話す。

現在、井澤商店近隣の事業者にも集中監視システムを導入する機運が高まっている。井澤会長は「国でもスマート保安、電気や水道検針との連携を検討する動きがあります。瑞浪地域でLPガスからそうした動きを盛り上げていきたい」と抱負を語った。

「100%を達成」と話す井澤会長

【大垣ガス】安定的な情報取得が魅力 スマメを使った検針サービス

電力会社のスマートメーターと連携する動きが始まっている。大垣ガスは、中部電力が提供する電力のスマメの通信網を、2021年度からLPガスの自動検針に活用していく。従来のLPガス遠隔監視システムは、ISDNやADSL、光回線など、通信規格の変更があるたびに顧客先にある設備を変更しなければならず、安定した遠隔監視情報が得られなかった。そうした中、LPWAなど、遠距離・少量データを通信目的とした規格が登場して大きく変わろうとしている。大垣ガスがLPWAに加え、新たな検針方式として選択したのはスマートメーターを利用したものだ。

電力のスマートメーターはマルチホップ方式を採用。同方式は隣接したスマートメーター同士がバケツリレーをして中継装置までの通信を行うというもの。例えば、検針先の顧客のスマートメーターが利用できなかったとしても、その周辺にスマートメーターが設置されていれば検針・保安データが転送されるのが大きな特長だ。中電管内のスマートメーター普及率は現状約7割(22年度に10割予定)で、同社エリアをカバーしており、極めて高い通信成功率が確保できている。

具体的には、ガスメーターに専用の通信端末を取り付ける。LPガスの使用量やガス漏れなど警告情報などのデータを、同端末から電力スマートメーターまで送信し、中部電力のスマートメーター通信網を経由して大垣ガスの集中監視センターに送る。集中監視センターがデータを受信するだけでなく、ガスメーターの遠隔遮断・復帰などの信号を送り、遠隔で各端末を操作することも可能だ。

保安管理統括グループの楠洋平マネージャーは「検針員やボンベの配送員などの人材確保が今後の課題です。同検針サービスを利用して業務効率化を図りたいと思います。また、高齢の方に対しガスメーターの復帰操作をお願いすることは困難なので、そのサポートができれば」と期待する。

同サービスは21年7月からスタートする。さらにその先では、同方式で遠隔監視システムの設置を全顧客の70%以上まで進めて、ゴールド保安認定事業者の取得を目指していく構えだ。

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