津波の危機を逃れた東海第二 さらなる安全性向上対策が進展中

2021年1月3日

【日本原子力発電】

東海第二発電所は、東日本大震災で津波が襲来するも、無事冷温停止に至ったという実績がある。現在、さらなる安全性強化に向けて工事が進む現場を、東工大の奈良林直特任教授が視察した。

2020年の暮れ、東京工業大学の奈良林直特任教授の視察に同行し、新規制基準に基づく安全性向上対策工事が進行中の東海第二発電所(茨城県東海村)を訪れた。東海第二の風景は以前とは一変し、敷地内のありとあらゆる場所で、防潮堤設置に向けた準備や地盤改良などの作業が進んでいた。建屋では耐震補強工事が始まり、敷地内のいたるところに足場が組まれ、圧迫感が伝わってくる。

建設時と同等かそれ以上の工事がそこかしこで繰り広げられている様子を眼前にし、安全性向上対策工事がどれほど大掛かりなものか、初めて実感することができた。

鋼管杭の直径は大人の身長を優に超える2.5m
東海第二を視察した奈良林氏

巨大な防潮堤建設へ 広範囲の地盤改良も実施

奈良林氏はまず、「必要な設備更新をしており、『老朽化プラント』ではなく『リニューアルプラント』。さらに安全性向上対策工事や、バックフィットへの対応が行われていることが重要だ」と強調。また、これらの工事の中身はサイトごとに少しずつ異なると指摘し、東海第二については、「太平洋側では津波への備えが特に重要になる。地盤改良をしながら大規模な防潮堤を設置するという、すさまじい工事を目の当たりにしたし、相当な深さの貯水槽も印象的だった」と語った。

新規制基準への対応では、原子炉設置変更許可、工事計画認可、20年間の運転期間延長認可の審査が、18年に終了。順次工事に取り掛かり、22年末までに終える予定だ。現在は、19年に申請したテロ対策の特定重大事故等対処施設の審査が進んでいる。

具体的な工事内容を見ると、特に大掛かりなのが防潮堤工事だ。東日本大震災の知見を踏まえ、標高最大20mの堤を、内陸の西側を除きぐるりと敷地内を巡るように設置し、全長1.7㎞に及ぶ見込みだ。直径約2.5mの鋼管杭を、地下60mの岩盤まで打ち込み、巨大な堤を支える。「国内のサイトでは最大径で、頑丈な分、大変な工事になる」(奈良林氏)。これを基礎にし、地上部を鉄筋コンクリートで覆っていく。

堤の設置ルートでは、同時に地盤改良を行う。表層にセメントを注入して一定の深さの層まで攪拌固化する手法や、水ガラス系の薬液をポンプで地下に圧入する手法を、地中深さに応じて使い分ける。水ガラス系の手法は、地下鉄の海底トンネルを掘削する際などに採用される技術だという。

ほかにも、干渉物撤去や森林伐採なども行う必要がある。このように複数の作業に同時進行で取り掛かるので、防潮堤設置のためにはかなりの広さの作業スペースを確保しなければならない。

1 2 3