津波の危機を逃れた東海第二 さらなる安全性向上対策が進展中

2021年1月3日

建屋外の作業本格化 火災対策は膨大な工事量

防潮堤以外にもさまざまな工事が実施されている。原子炉建屋の脇では、緊急時に原子炉の崩壊熱の除去に使う海水を取水するポンプピットの建設が進んでいた。深さ約30mの取水槽内にポンプを設置し、緊急時に原子炉を冷却する系統に海水を送ることができる。別の場所では、約5000tの淡水を貯蔵する地下タンクも2基建設しており、7日間、原子炉を冷却することが可能だという。

非常時に備え、巨大な取水槽も建設

ほかにも、屋外配管の耐震補強や既設の排気筒の基礎補強なども行われ、原子炉建屋内の最上階では、大地震で天井クレーンや燃料交換機の落下を防ぐ耐震補強工事が行われていた。そして、今後は内部火災対策の工事が待ち構えている。難燃ケーブルへの取り換えや、取り換えが難しい箇所では防火シートでケーブルラック全体をくるみ、熱感知器や消火配管を入れた複合体を作る作業を行っていくのだが、奈良林氏によると「特に中央制御室の床下はケーブルが密集しており、相当な作業が予想される」とのことだ。また、火災に備えて重油や軽油のタンクを原子炉建屋から離すための移設など、防火対策にも万全を期す。

ケーブルラック全体の難燃化

「膨大な工事量を2年で完了させる予定で、工事密度は高い」(奈良林氏)。その進捗管理にも高い能力が求められると想像させられた。

工事は屋外の土木工事が佳境を迎え、今後は本格的な防潮堤建設の作業や、建屋内での細かな作業などが増えてくる。東海第二では残念ながら、18年に感電による死亡事故が発生した。星野知彦・東海第二発電所長は「屋外では大規模な工事が進み、建屋内では狭い場所での作業も出てくるが、事故を教訓に、人災や火災を絶対に起こさないことを肝に銘じている。他社の良好事例や事故・トラブルの例も共有し、今後の工程に生かしていきたい」と力を込める。

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