脱炭素と再エネ共存を目指す 蓄熱運用を変革する時代へ
未利用熱とのシナジー 高効率で熱を取り出す
福嶋 都市の中の未利用熱を有効活用する取り組みについては、当社はパイオニアだと自負しております。例えば東京の箱崎では、隅田川の河川水の熱を使った熱供給を行っており、この河川水熱利用は国内初の事例です。また、千葉の幕張では近隣の下水処理水の熱を、また群馬の高崎では井戸水の熱を利用した熱供給も手掛けています。
珍しい事例としては、電力会社の変電所の排熱を利用したケースもあります。蓄熱と未利用エネルギーの利用が、われわれがこれまで取り組んできた二大テーマとなっています。
こうした未利用熱の活用は、単独の建物では難しく、また通常に比べて、どうしてもコストがかさみますが、熱供給のような大きな規模によるスケールメリットを発揮させることで経済的な効果を生み出して導入しています。
松本 未利用熱とヒートポンプの相性はいいのですか。
福嶋 未利用の熱は比較的低温の温度帯です。そして、低い温度帯から、より低い、あるいはより高い温度帯を作り出すのがヒートポンプの得意技で、ヒートポンプがあるからこそ未利用の熱を活用できるのです。
松本 未利用の熱を活用するケースでは、運用上の苦労は多いかと思います。
福嶋 例えば箱崎では、隅田川の河川水をフィルターを通して直接、ヒートポンプに取り込んで熱交換します。ただ、あの場所は海に近く、すぐに配管が塩分で腐食するので、チューブをチタン製にしたり、貝殻がチューブに詰まることがあるので、チューブ内をボールで洗浄するような仕組みを取り入れています。
松本 蓄熱槽そのものにも工夫を施したりするのですか。
福嶋 実は蓄熱槽の水面にボールを一面に浮かべています。水と空気が接触して、酸素が蓄熱槽の中に溶け込むことを防ぐためです。設備の腐食を減らす工夫で、これらは先人たちが苦労を重ねて改善してきたノウハウです。
松本 いろいろな技術を使って運用しているのですね。
福嶋 蓄熱運用にはいろいろな技術的なノウハウがあります。限られた容積の中にどれだけ多くの熱を蓄えるかが肝要で、当社は、蓄えた100の熱を、90ほどの割合で取り出せる運用の技術を持っています。
松本 それはすごいですね。
福嶋 蓄熱槽内に、きれいに温度成層を作り上げるのです。その辺が腕の見せどころです。
松本 エネルギーを蓄える技術としては、蓄電池があります。それと比較するとどうですか。
福嶋 熱利用の蓄熱と、電気利用の蓄電池とを一概に比較できませんが、蓄電池ではどうしても取り出せる電気の量は7~8割程度です。そう考えると、あまり知られていませんが、蓄熱って効率がいいんですよ。
遠隔操作がコロナ禍で奏功 蓄熱とリモート制御の好相性
松本 制御システムについてお聞きします。既に無人運転につながるような制御の仕組みをいち早く取り入れてきたと聞いています。
福嶋 当社では、いち早く遠隔制御の仕組みを導入してきました。これによって、例えばA地点を親プラント、いくつかのサイトをB地点とし、それらを子プラントとします。そして、Aプラントの制御室から全てのBプラントを遠隔で制御することができるようになっています。